この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

9 月に読んだ本

読書メーターをブログにまとめる機能があるらしいので、ちょっと遅れたけど使ってみることにする。

最近よい本によくあたるなあ、と思う。
こうやって振り返ってみても、やっぱり、よかった本がたくさん並んでいる。

とはいっても、100% の本が 100% よかった、というわけではもちろんなくて、「よかった本が多い」のは、「読んだ本が多い」から、ということも言えるのだろう。
9 月は 22 冊だった。

9 月のトップ 3

森博嗣の描く世界、見ている世界でもあるのだろうけど、その美しさ、潔さに気づいてから、彼の著作の中に毎回それを見つける。
もちろん、この作品の中にも見つけた。

森博嗣の作品の主要登場人物は普通の「人間らしく」ないことが多くて、それこそがまさに魅力なのだけれど、この作品の登場人物は妙に地に足がついていて、にもかかわらず美しさを失っていないところが印象的だった。
そういう風に生きていいんだ、と思えた。

僕はうっかり気を抜くと頭のなかに言葉が氾濫してしまいがちな人で、近ごろは、言葉を使って考えること、あるいは考えるために言葉が必要なこと、にちょっとうんざりしていた。

でも、考えるためには言葉が必要だ。
この本を読んだことによって、それが改めて理解できたし、そのことへの覚悟が強くなったように思う。

終盤に出てくる「つめこんで、ゆさぶって、空っぽにする」というフレーズは覚えやすくて、かつ、考えることの重要な部分を捉えている気がする。
日々、「つめこんで、ゆさぶって、空っぽに」したい。

学生の頃は京都に住んでいた。
し、働き始めてからも 2 年半くらい住んでいた。
端的に言って、京都はすごくいい街だと思う。贔屓目もあるかもしれないけれど。

この本では、京都の観光案内、ではまったくなくて、京都市バスの 206 号系統で京都市の外周を京都駅からぐるりと一周しながら、ちょいちょい寄り道もしつつ、京都の「ふだんの様子」とでもいうべきものを描く。
描きながら、京都という街の歴史や、(そと見ではなく)リアル京都、の特徴、までを描き出す。

「都市はいま空襲を受けている」というフレーズが鮮烈。
僕の記憶では、京都は割合、かなり空襲を逃れていたと思うけれど、それでもやはり、受けている。

とかそういう難しいことはとりあえず置いといても、京都にそれなりのあいだ住んでいた人として、京都、そういう街だった、とうなずくことしきりのたいへん素敵な本だったといえる。

なお「京都そういう街だった」シリーズとしては、全然関係ないけど、森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』も大好きです。
はあ、木屋町をふらふらしたい……。

雑感

こうやってトップ 3 を決めてみたところ、読んでから少しだけ時間が経ってから本のことをふりかえってみるというのも、なかなか楽しいということがわかった。

ただ、内容をよく思い出せるものと、読んでいる間の気分や、読後感は最高だったのに、内容をよく思い出せないものとがある。
内容をよく思い出せないものについてはろくなコメントが書けないし、ほんとうによかったのか自分でもいまいち自信が持てないので、トップ 3 にあげるのがはばかられるのは残念だと思う。

その中に、実際ほんとうによかったものもあると思うのだけれど。

読書メーター

というわけで、ようやく本題?の読書メーターのまとめです。

2014年9月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:6293ページ
ナイス数:21ナイス

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)感想
これは、美しいかもしれない。
読了日:9月1日 著者:森博嗣
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
読了日:9月5日 著者:マイケルサンデル
奇跡 -ミラクル-奇跡 -ミラクル-感想
知っていたけれど忘れていた、いろいろなことを思い出させてくれる詩集です。
読了日:9月7日 著者:長田弘
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
読了日:9月10日 著者:鴻上尚史
クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)感想
美しい。美しい、と思っていたけれど、それだけでは片付かなくて、かなしいし、たのしい。
読了日:9月10日 著者:森博嗣
スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)
読了日:9月13日 著者:森博嗣
スカイ・クロラ (中公文庫)スカイ・クロラ (中公文庫)
読了日:9月13日 著者:森博嗣
はじめて考えるときのように―「わかる」ための哲学的道案内 (PHP文庫)はじめて考えるときのように―「わかる」ための哲学的道案内 (PHP文庫)感想
言葉を使って考えることに最近うんざりしていたけれど、もうしばらくは言葉を使って戦ってみよう、と思い直させてくれました。「つめこんで、ゆさぶって、空っぽに」しようと思います。
読了日:9月14日 著者:野矢茂樹
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
読了日:9月15日 著者:村上春樹
これはペンです (新潮文庫)これはペンです (新潮文庫)感想
ぞくぞくします
読了日:9月15日 著者:円城塔
30代にしておきたい17のこと (だいわ文庫)30代にしておきたい17のこと (だいわ文庫)
読了日:9月15日 著者:本田健
実験的経験 Experimental experience (講談社文庫)実験的経験 Experimental experience (講談社文庫)
読了日:9月17日 著者:森博嗣
喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)感想
はてしなくさわやかで、美しい。
読了日:9月17日 著者:森博嗣
絶叫委員会 (ちくま文庫)絶叫委員会 (ちくま文庫)感想
最高。呼吸チョコ、「おいしすぎて息つく暇もないくらい続けて食べてまうってことやろ」て言った人がいたことを思い出しました。こわい。
読了日:9月18日 著者:穂村弘
戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)感想
深井零というひとの人間臭さが印象的でした。
読了日:9月21日 著者:神林長平
常識として知っておきたい日本の三大宗教―神道・儒教・日本仏教 (KAWADE夢文庫)常識として知っておきたい日本の三大宗教―神道・儒教・日本仏教 (KAWADE夢文庫)
読了日:9月23日 著者:
数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう感想
整数はたのしい!
読了日:9月23日 著者:結城浩
戦略は「1杯のコーヒー」から学べ! (ビジネス・経済)戦略は「1杯のコーヒー」から学べ! (ビジネス・経済)感想
コーヒーをネタにイマドキの経営戦略のあり方をつまみ食いできる。馴染みのある会社ばかりが登場するので、コーヒー好きには結構楽しい。のだけど、おはなしの、というか文章のテイストが三流コメディに寄りすぎててちょっとつらいです。
読了日:9月24日 著者:永井孝尚
恋愛論 完全版 (文庫ぎんが堂)恋愛論 完全版 (文庫ぎんが堂)
読了日:9月27日 著者:橋本治
京都の平熱――哲学者の都市案内 (講談社学術文庫)京都の平熱――哲学者の都市案内 (講談社学術文庫)感想
そういう街だった、そういう街だった。
読了日:9月27日 著者:鷲田清一
心のリュックを軽くする 自分の感情にあやつられないための21のヒント心のリュックを軽くする 自分の感情にあやつられないための21のヒント
読了日:9月28日 著者:エルサ・プンセット
隠し剣孤影抄 (文春文庫)隠し剣孤影抄 (文春文庫)
読了日:9月28日 著者:藤沢周平

スカイ・クロラシリーズの表紙が並ぶと、実に美しいですね。