ひとひら言葉帳という Twitter アカウントがあります。
このひとは脇目も振らずにひたすら延々と「うつくしいことば」を紹介し続けてくれるひとです。
bot とは言いながら、季節に応じて流れる言葉が移り変わっていくのも素敵です。
日ごろタイムラインがすさみがちな人などは、これをフォローすることで心を穏やかにする効用が期待されます。
このひとひら言葉帳がきっかけで知った詩人や歌人というのが何人もいるので、このエントリではそのあたりをご紹介します。
長田弘は、詩人です。
僕はこの「最初の質問」がいたく気に入りすぎて、「最初の質問」が入っている「長田弘詩集」を買ったのを皮切りに、彼の詩集を買い集めています。今数えたら 7 冊ありました。
みすず書房から出ているシリーズは、装丁が美しい。
余談ですが、「われら新鮮な旅人」は、元 Google(本社)副社長の村上憲郎さんが好んで使っているフレーズ「我らいつも新鮮な旅人、遠くまで行くんだ!」の元ネタですね。
エッセイもよいです。
「最初の質問」は絵本も出ているようなので、そのうち買おうと思っています。
東直子は、歌人です。
この「十階」というちょっと不思議なタイトルが気になっていたのですが、何のことはない、マンションの「十階」のことでした。
このふらんす堂のシリーズもまた、装丁が美しい。
表紙の写真だけだとわかりませんが、なんというか、本全体が丸みを帯びたやわらかい装丁です。書店で手にとってみることをおすすめします。
『十階』は、一年三百六十五日、毎日一首ずつの短歌と短文で日記をつけたような形の歌集で、もちろん歌もよいです。
また、『十階』に収録されているわけではないのですが、東直子はなんといっても、穂村弘も絶賛していた次の一首がすばらしい。
廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て
何度読んでもぞくりとします。
穂村弘も、歌人です。
というかこの先ずっと歌人です。
穂村弘という人は歌もよいし、エッセイも面白くて、だいぶ有名な歌人みたいなのですが、僕はちょっと変なところから入っています。
いやいや東直子じゃないか……という感じですが、実はこの『回転ドアは、順番に』というのは穂村弘と東直子の往復書簡?往復短歌?形式の作品で、穂村弘パートが半分、東直子パートが半分、というつくりになっています。
というわけで、僕はこの作品で穂村弘を知りました。
実際のところ穂村パートも東パートもものすごくよくて、下手な恋愛小説より数百倍熱いです。うかつに読むとやけどします。喫茶店で読んでたら最後泣けまくって大変でした。たぶんもう一回読んでも泣く気がします。うちでこっそり読むことをおすすめします。
穂村弘は歌集も良いし、エッセイも笑えて、かつ身につまされます。特にエッセイはいっぱい出ているので、読めども尽きない感じなのがよいです。
僕は、短歌のつくり方も、だいたいこの人の本で学んでいます。
斉藤斎藤といういかにも不思議な名前の人のことは、この歌で知りました。
ド直球!
こういうのずるいぜ……と思います。
目下唯一の歌集『渡辺のわたし』は、次のページで買えます。
村上きわみ
村上きわみという人のことをどうやって知ったのかは残念ながらもう思い出せないのですが、たとえばこの歌とか、よいですね。
これも。
これの本歌取りなのかしら……とか思ったりしますが。
そうかといって、この歌がめちゃくちゃ有名ってわけでもないだろうから、こういう時は本歌取りとは言わないのかな。
歌集を買ってみたところ、ちょっと昔の作品ということもあってか、近ごろの作風よりもだいぶ尖った感じで、また面白かったです。
笹井宏之
最後に、このひとは実はひとひら言葉帳で知ったわけではないのですが、笹井宏之。
このひとを知ったのは、『八月のフルート奏者』というタイトルの歌集をジュンク堂で見かけて、なんとなく買ってみたのがきっかけでした。
なんか紹介した歌からは伝わらない気もしますが、基本的には、日常の素直なスケッチが気持ちのよいひとです。
亡くなってしまったというのが惜しい……。
まとめ
というわけで、ひとひら言葉帳はよいことばと、その作者に出会わせてくれるよいアカウントです。
よいことばと、その作者に出会いたい向きはフォローされるとよいかと思います。