この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

『プロダクトマネージャーのしごと』から学んだこと

プロダクトマネージャーのしごと』は本当にすばらしい本だった。

邦題にこそ『プロダクトマネージャー』という役割名が入っているが(※原題は『Product Management in Practice』)プロダクトはみんなで作るものであり、ソフトウェアエンジニアである自分もまたプロダクトマネジメントの重要な部分を担っている。常にではなくとも、すぐれたプロダクトマネージャとしての振る舞いが求められる場面や、役に立つ場面というのも多いと感じる。
この本から学んだことをよりしっかりと身につけ、実践していけるように、自分が学んだことをまとめてみる。

学んだことは、「過程にとらわれず、価値に集中せよ」「ユーザー価値とビジネス価値、シニアステークホルダーとチーム、すべてをつなげ」の大きく2つにまとめることができる。
以降はこの大きな2つの切り口から、学んだことをまとめていく。

過程にとらわれず、価値に集中せよ

僕が何よりもこの本に目を開かされたのは、過程にとらわれず、価値に集中することの重要性についてだ。

もちろん、僕もアジャイルの実践者として、「やり方にとらわれることの愚かさ、危険性」についてはそれなりに理解し、気をつけているつもりではいた。
だが、全然甘かったと思った! すぐれたプロダクトマネージャというのは、本当に過程にとらわれず、価値に集中するものなのだ。

プロセスにとらわれないこと

プロダクトマネージャは常に、価値、またの名をアウトカムに目を向ける。

たとえば、何か「失敗」があったとき。すぐれたプロダクトマネージャはそこにある意図や感情よりも、アウトカムに目を向ける。

あるいは、「ロードマップ」が求められているとき。「ロードマップには機能ではなく、課題を書く」といった方法論も有用ではあるが、いきなりそれを持ち出しても仕方ない。
そうではなく、それが組織にとって何を意味するのかを明確にするために、求めている人に質問し、また作ったロードマップにもそれを明確に記す。そのロードマップから組織は何が得られ、何は得られないのかを明らかにする。

役割にとらわれないこと

この本によると、プロダクトマネージャはあいまいな仕事だ。そして、組織によってそれぞれ独自な仕事だ。
だから、役割期待を明らかにするには、周りの人と話すことが重要なのだ。プロダクトマネジメントの本に書いてあることをその通りにやるのが仕事じゃない。

ひるがえって、エンジニアである自分の周囲のプロダクトマネージャが「プロダクトマネージャらしいこと」をしてくれないと思うことがもしあったとしても、「プロダクトマネージャらしくないから」ではなく、「価値を作るために、なぜ、何をその人にしてほしいのか」といった切り口で率直に話したいと思う。

価値に集中すること

プロセスにも役割にもとらわれることのないすぐれたプロダクトマネージャは、常に顧客とビジネスインパクトから考える。
もちろん、そこに至る道筋は簡単じゃない(簡単だったらプロダクトマネージャは必要ない)。だから、道筋の候補は常に複数あり、変わり続ける優先順位を評価し続ける。

そして、ただ自分がそう考えるだけじゃない。ストーリーを作ったり、計画を立てたりといったチームの活動の中でも、常に戦略的なゴールと目的を会話の中心に置く。
そうすることで初めて、プロダクトチームは機能工場ではなく、プロダクトチームでいられる。

また、自分の時間の使い方についても、ゴールと優先順位を反映できているかに気を配る。すべてを最優先にしてしまって燃え尽きるのではなく、ゴールのために重要なことに時間を使い、最小限の労力で最大限のインパクトを出すことを目指す。それがチームや、ビジネスの持続性にとっても必要なことだからだ。

ユーザー価値とビジネス価値、シニアステークホルダーとチーム、すべてをつなげ

僕がこの本から学んだもう一つの大きなことは、プロダクトマネジメントには、「ユーザー価値」と「ビジネス価値」や、「シニアステークホルダー」と「チーム」といった、ときに矛盾したり、乖離したりしかねないものをつなぎ続けることが本当に重要だということだ。

今までもそれなりにプロダクトマネジメントに興味を持って学んできて、プロダクトマネージャが「つなぐ」役割であること、特にユーザとエンジニアの「翻訳者」のような中間者的立場に陥らず、両者を直接結びつけることが重要であることなどは知ってはいた。
だが、どうすればそれができるのかはよくわかっていなかった。この本にはその実践のヒントが山ほど書かれていた!

まず、ユーザーを知ること

プロダクトマネジメントでは、まず何よりもユーザーを知る必要がある。ユーザーを知らずに、ユーザーが使ってくれるプロダクトを作れるわけがない。当然のことだ。

『プロダクトマネージャーのしごと』を読んで、それが本当に重要であること、またどうすれば本当にユーザーを知ることができるのかのヒントが数多く得られた。

特に「ユーザーの現実に生きよ」という原則の観点からまとめられていたチェックリストには目を開かされた。ユーザーを知るとはこういうことか、と。
以下は、そのチェックリストからの引用だ。

  • 自分のチームは少なくとも週1回はユーザーや顧客から直接学んでいるか?
  • すべてのプロダクトに対する意思決定は、ビジネスゴールとユーザーニーズにもとづいているか?
  • 自分のチームは、ユーザーニーズや行動に対する理解を深めるために、定期的に自分たちのプロダクトと、それと競合・関連するプロダクトを使っているか?
  • ユーザーニーズと利用目的は実際の自分たちのユーザーのニーズと利用目的を反映してはっきりとまとめられているか? それとも、ビジネスが想像するニーズや目的だけか?

これらのチェックリストには示唆が詰まっている。ユーザーと話す機会は「少なくとも」週1回であることや、すべての意思決定がビジネスゴール「」ユーザーニーズにもとづいている必要があること。ユーザーを知るために、自分たちのプロダクトだけでなく、競合や関連プロダクトも使うこと。必要なのは想像ではなく現実のユーザーニーズであること。

色々あるけれど、出発点はとにかく、ユーザーと話すこと。
プロダクトマネージャだけでなく、プロダクトチーム全体が、継続的にユーザーと話し、学び続けていないなら、スタート地点にすら立っていないのだと思う。

明確にすること

効果的なプロダクトマネジメントにはコミュニケーションが不可欠だ。なかでも、明確なコミュニケーションが重要である、という主張からは勇気が得られた。
僕自身も、常々明確さを大事にしているからだ。それでも、明確さを保つのは難しく、心が折れそうになることもある。

先ほどと同様、「心地よさより明確さ」という原則の観点でまとめられたチェックリストを以下に引用しておく。

  • やっていることとその理由をチームが明確に理解をしているか確かめるために、必要な質問や会話のファシリテーションをしているか?
  • ユーザーやビジネスにとってより大きなアウトカムを得られそうだと思ったとき、他のチームやプロダクトマネージャーに積極的に働きかけにいくか?
  • 連絡してきたステークホルダーにすばやく、思慮深く反応しているか?
  • 解決策になりそうなことを探しているとき、いつも選択肢をいくつか示して、それぞれのトレードオフステークホルダーに説明しているか?

これらの記述からは、「伝わったはず」や「伝わるといいな」といった態度が排除されている。伝わるまでが自分の責任である、という覚悟が感じられる。
これはプロダクトマネージャに限らず、ソフトウェア開発に関わるすべての人に求められる態度だと思う。

伝え、学ぶこと

明確さを手に入れたら、プロダクトマネージャは異なる視点をつなぐことができる。伝え、また、学ぶのだ。

伝えることの重要性は、たとえば「自らを不要とせよ」という原則の一つに表れている。
自分がいなくてもチームが自ら正しい意思決定ができるように、予めプロダクトの意義や背景、ユーザーのことなどを伝えておく。伝えておく、というより、伝え続けている状態でいる、という方が正確かもしれない。

ドキュメントは不完全な「方がいい」という主張も面白い。その方がコラボレーションの余地があるからだ。これは伝えるということを超えて、チームとしてともに学び、知識を生み出すという態度だ。そのために、最初のドキュメントは1ページ1時間を上限とする、という指針が力強く、また心強い。

また、自分が発信するだけでなく、多様なステークホルダーの視点や協力を得る、ということも重要だ。そのために邪魔になるのが「守りの姿勢」で、役に立つのが「好奇心」だとこの本は説いている。「学ぶ姿勢」と言い換えてもいいだろう。

チームを守る、ユーザーを守る、プロダクトを守る。その対象がなんであれ「守る」という行動は邪魔になる。
一見、それらを守るのは正しく、美しくすら思える。しかし、「守る」ことは最終的にはうまくいかないのだ。

かわりに好奇心を持ち、教えてもらう。何かが脅かされているように見えるのは、おそらくそこに自分やチームが知らない・気づいていない何かがあるからだ。好奇心を持ってそれを探る。
誰かが何かおかしなことを言っているなと思ったら、「なぜですか?」と詰問するかわりに「やり方を見せてもらえますか?」と聞いてみる。

最後に、「シニアステークホルダーは必ずポーカーに勝つ」というフレーズがすごく印象的だった。その通りで、シニアステークホルダーに「影響」を与えようとしたり、ましてや「対立」しても意味がない。結局のところ、決めるのはその人だからだ。
だからそうではなく、「情報を知らせる」ことに集中する。シニアステークホルダーが知らない情報はきっとある。それを適切に伝えることに集中すれば、最善の意思決定が可能になる。また、ユーザーのことをはじめとして、逆にシニアステークホルダーから学ぶこともできるだろう。

すべてをつなぐ

こうして、本物のチームを作ることができ、真にビジネス価値とユーザー価値を両立させることができる。

ゴール、戦略、指標等は、綺麗に並んだ層ではない。ぐちゃぐちゃで、トレードオフが避けられない。
それでも、安易に局所解に陥ってはいけない。全体のバランスを見ながら、できる限り最高になる一手を探す。
そのためにまず、ゴールや戦略は、シンプルにしておく。誰もが暗唱できるくらいに。

一方、戦術的な会話の例として「デザインの選択」や「期日の交渉」などがある。これらは、それ自体にフォーカスしすぎない方がいい。そういった会話は、ユーザーニーズやビジネスゴールについての戦略的な会話にレベルアップする。
ユーザーは誰で、何を考えているのか。その結果としてすぐれたデザインが導かれる。ビジネスの状況と戦略はどうなっているのか。その結果として期日の必然性や、選択肢の幅が導かれる。
こうすれば、チームが戦略を理解するチャンスが得られる。

アウトカムとアウトプットはつながっている。「アウトプットよりもアウトカムを」ということがよく言われるが、対立構造でとらえない方がいい。本当はアウトカムの「ための」アウトプットなのだ。

ユーザーニーズとビジネスニーズもやはり、対立構造にしてはいけない。ビジネスニーズを満たす「ための」ユーザーニーズ、という構造に持ち込む必要がある(※ユーザーニーズを捏造するということではなく、探索して発見する、ということ)。

戦略と戦術、ユーザーニーズとビジネスニーズ、指標とユーザーストーリー、といったすべてをつなぐ。
それらの階層、要素を行き来しながら、最善手を探り続ける。それがプロダクトマネジメントなんだと学んだ。

プロダクトマネジメントも「でも、やるんだよ」なんだな

アジャイルサムライ』(邦訳)の最後の方に「でも、やるんだよ!」というフレーズが出てくる。
これがとても好きで、「決して簡単なことじゃないし、色々うまくいかないこともあるだろうけど、それがやるべきことなら、がんばろうぜ」くらいの意味の励ましの言葉だと受け取っているのだけど、プロダクトマネジメントもそうなんだなと思う。

ビジネスの世界は混沌としていて、だからこそ、すばらしいプロダクトを生み出すための、やはり混沌としたプロダクトマネジメントという活動に価値がある。
やっていこうと思います。

仕事の中でずっと学びがある

なんか(何かを)書きたくなったから書くんだけど。

仕事の中で、ずっと学びがあるなって思う。

プログラマとして働き始めてから10年以上が経って、人がどんどん入ってくる若い業界でもあるゆえシニアとか呼ばれるような感じになってきているのだけれど、ずっと学びがある。

一時期は、プログラミングは結構できるようになったし、アジャイルのこともいっぱい勉強して結構わかるようになったな、それこそもうシニアなんかなとか思ってたんだけど。
それがだいたい5年前くらいかな。

まあ、「プログラミング」から「ソフトウェアエンジニアリング」に移ったとか、アジャイルといっても安定した一つのチームのことに閉じず、もっと多様で広い世界の中のアジャイルを考えるようになったとか、そういうのもあるにはある。
それはそれであるんだけど、でも、普通にアプリケーションのプログラミングをするなかでも、普通に一つのチームの中で仕事をするうえでも、日々発見だったり、学びがあるんだよなあ。

今いる会社、チームにそれだけ学びや挑戦の機会があるということでもあるし、学びにひらかれた文化があるということもある。とはいえ、仕事の内容自体が何か際立ってチャレンジングとか、先進的ということでもないんだよな、たぶん。割とそういう時期もあったけど、今はそれほどでもない。

それでも日々学びがあるというのは、なんだろうな。
学びの機会や文化がある場所にいることで、学ぶ体質になっている、というのは大きい気がするな。

(歴が)若い人からも、もちろん学ぶ。

そんな感じで、5年前の自分が今の自分を見たらこの人すげーなと思うくらいには学んで、成長してる気がする。
なんかそれがすげーなと思うのだよな。自分がすごいってことじゃなくて、その事実が、というのか。

別に5年後もそうありたいとかそういう話でも別になくて、ただ、ふと振り返ってみてそっかーと思ってる感じ。
まあ、何年後とか特になく、それなりに学びがあり続けるといいなとは思う。

やっぱ環境のおかげな部分は大きいんだろうな。
感謝しよう。

オチはない。

ただ、学び続けるのはいいものだよなあとふと思った話。

複数チームでうまく価値を届けるためのヒントが満載の本『スクラムの拡張による組織づくり』

以前対談させていただいただいくしーさんが本を出されたということで、対談内容にも通じる組織の話ということもありこれは読まねば! と思い買って読んでみました。*1

結果、とてもよかったです。
最近の個人的な関心事にも通じる部分が大きく、多くのヒントが得られ、また思考を刺激する内容でした。

複数チームでうまく価値を届ける

僕がいる組織ではスクラムを取り入れていませんし、スクラムやScrum@Scaleを取り入れる予定もありません。*2
それでも、複数のB2B SaaSを展開するアジャイルなプロダクトチームとして、複数チームでうまく価値を届けていく必要はあります。

単一のプロダクトを複数チームで開発するに際して、どのようにチームが分かれているとよいのか。チーム間の連携についてはどう考えるとよいのか。その濃淡は。また、(スクラムでいうところの)プロダクトオーナー側はどうなっているとよいのか。さらには、複数プロダクトの間での関係性はどうあるべきか。

最近は、一つのチームの開発者として働きながらも、より大きなチームとしてもより大きな価値を届けていきたいので、そういったことにも日々頭を悩ませています。

Scrum@Scaleではどうするのか

そういったさまざまな関心・課題感に対して、「Scrum@Scaleではどう考え、どう取り組むのか」という一つのリファレンスが得られるという点で、僕にとってとても有用な本でした。

Scrum@Scaleには12の「コンポーネント」が定義されているのですが、いずれもなんらかのかたちで(Scrum@Scaleではないとしても)組織に必ず必要になる機能なんですよね。

特に、「スクラムマスターサイクル」と「プロダクトオーナーサイクル」という両輪の枠組みで、開発チーム(+スクラムマスター)側とプロダクトオーナー側のそれぞれが複数チームで連携していく、という整理の仕方は、確かに複数チームでプロダクトを作っていくと自然とそうなるよな、と感じられるものです。*3
Scrum@Scale、そしてその解説書であるこの本の内容は、その自然をいかに構造的にサポートしていくか、という取り組みの一つの解と言えるでしょう。

複数チームで価値を届けていく組織に所属しているなら(かつ、そのありようをよりよくしていきたいと思っているなら)、仮にスクラムやScrum@Scaleに取り組んでいない・取り組む予定がないとしても、知っておいて損のない内容だと思います。

また、本の構成もとてもよく考えられていて読みやすく、読みながら段階的に理解や思考を深めていくことができました。

自分のチームのことを考えるヒントにする

この本を読む中で、僕はたとえば以下のようなことを考えました。

  • 開発チーム間の連携と、プロダクトオーナー間の連携が別れているのは、確かにスケールしやすい構造だよなとは思う。でも一方で、この構造だと開発チームがフィーチャーファクトリーに矮小化されてしまいやすくないだろうか?
  • 同じScrum of Scrumsに含めるのは、共通の関心事を扱っているチーム。だとすれば、関心事を切り離すことで強く連携せず独立して動けるようにするという方向性も重要だよなあ(と改めて認識)
  • 「毎日45分で問題が解決する」構造は美しいし、本当に経営レベルの課題まで1日単位で解決できるなら最強すぎるな
    • 一方で、強力ゆえに、いわゆる「すぐ話しに行けばいいのに、Daily Scrum待っちゃう問題」を助長しないかというところが気になるな
  • 自分の組織全体では、明確な構造をトップダウンには定めず*4、コミュニケーションの価値を基礎として、全体が全体と自由に連携し合うことをむしろ推奨している。とはいえ、n対nの関係性を維持し続けることにさすがに限界も感じられる中で、意図的になんらかの構造を入れることでより有効なコミュニケーションを促進できる可能性があるかもしれないな
  • 一方で自分がいる事業では、事業内は比較的密結合な状態が続いてきたところを、少しずつ疎結合に近づけてきた。その方向性をさらに推し進めるか、ある点では維持するのか。また、どういう形を目指すのか、Scrum@Scaleのコンポーネントも参考にしながら考えてみるとよさそうだな

これらはいずれも(個人的には)Scrum@Scaleをやろうとか、取り入れようとかいうこととはまったく関係なく、チーム・組織を考えるための良質なヒントを得られたことで思考が刺激され、考え始めることができたことです。

これらの考えはまだまとまっていないのですが、これからも考え続けていくうえで、Scrum@Scaleの考え方や、だいくしーさんが補ってくれたさまざまな解説は間違いなく貴重なリファレンス・補助線になると感じます。

ということで、だいくしーさんとてもよい本をありがとうございます。
そして、僕みたいに複数チームや組織のことを考えていたり、もっとよくしたいと思っている人にはとてもおすすめの本です!

*1:ちなみにそのときの対談記事はこちら: アジャイルリーダーシップとはなにか?どう実践するか?権力ではなく影響力でアジャイルな組織をつくるために【対談】 - Agile Journey

*2:XPをそのままスケールした感じと言えばいいのか……興味がある方はスライド「実践エクストリームプログラミング / Extreme Programming in Practice - Speaker Deck」をご覧いただけるとイメージがわくかもしれません

*3:Scrum@Scaleガイド - Scrum Inc. Japan #TeamworkMakesTheDreamWorkに掲載されている「Scrum@Scaleのコンポーネント」の図を見るとイメージしやすいと思います

*4:チーム全体は複数事業にまたがっているので、事業の区切りは一応あるにはあるが

2022年のふりかえり

ちょっと早いけど、今年をふりかえる。

やったこと

「今までの延長線上にない、なにか」をやる。

去年のふりかえりで、こう書いていた。うーん、なにかやっただろうか。

結婚した。Technical Product Managerになった*1。翻訳出版をした。ソロイベントで登壇した*2。1年で2回舞台に立った。

うーん、こんなとこ?

わかったこと

こうして振り返ってみて思うのは、「延長線上にないなにか」ってなんだ、てことだ。

どれも、今までの延長線上にも思える。考えてみれば当たり前で、なにか新しいことをしたつもりでいても、たいていは過去からの流れがあってそこに至っている。
突然結婚したわけじゃないし、TPMになったのもそういう動きを前からずっとやっていたからだし。翻訳は去年からずっとやっていたし、登壇自体は初めてじゃない。内容も翻訳絡みだし。年2回立つのは初めてだけど、舞台も初めてじゃない。

まあ、なんだかんだ色々やったから、あわせ技で十分新しかった、と言えなくもなさそうだけど。
ただ逆に言うと、これだけ色々やっていても、本当の意味で新しいことはなかったんだな、とも言える。

たまにジャンプした方がいいとは思う。

ぼちぼちいい年になってきて、自然の傾向(?)みたいなところとしても、なんとなくだんだん新しいことに取り組まなくなっていくような気がする。
でも、いわゆるconnecting the dotsみたいなことで、離れたところに点を打ったからこそ、後から美しい絵が見られる、みたいなことってあると思う。

なので、意識してちょっとジャンプするのって大事だと思うのだ。

次にやること

ただ、無理やり新しいことを作り出してやるってのもなんか違うな、と思う自分もいる。
今までは別にそんなことしてなかったわけだし。可能性に自分をひらいていただけ。

もう少しこのままでもいいのかなー。定点観測はしたい。来年、また何か新しいことができたか。年イチでチェックするのはいいだろう。

なんとなくだけど、社会にひらいていくのが次の新しいことという気はしている。
基本的に内向的というか、引きこもり気質というか、本質的に一人が好きみたいなところがあるんだけど、いやこの「本質的に一人が好き」っていうやつの解像度をもうちょっと上げてもいい頃合いなんだと思う。「本質的に一人が好き」だったら、こうやってブログ書いて公開したりしないと思うんですよね。だとしたら、の先に何か新しい可能性があるような気がしている。

*1:そもそも世の中的に広く合意された明確な定義がまだない役割だと思うけど、僕がやってるのはその中でもたぶん特殊で、基本ふつうのソフトウェアエンジニア、ただし事業の経営に片足の先を漬けておく、みたいな感じの役割

*2:登壇者が自分ひとりのイベントは初。今後も当面ない気がする😂 ちなみに30分喋ったのも初

『アジャイルリーダーシップ』発売です

アジャイルリーダーシップ: 変化に適応するアジャイルな組織をつくる』(原題: The Agile Leader : Leveraging the Power of Influence)という本を、会社の同僚3名と一緒に翻訳しました。

今日、発売です。

www.amazon.co.jp

僕が愛してやまないジュンク堂池袋店にも入荷してました。うれしい。

アジャイルラクティスを導入し、実践していく方法は20年以上前からさまざまな書籍で語られ続けていますが、チームや、さらには組織をアジャイルへと導いていく「リーダーシップのあり方」については、まとまった日本語の書籍が今までなく、ほとんどの人が関連書籍*1の記述を参考にしたり、隣接分野*2の知見を借りたり、各自で工夫したりしてきた*3というのが現状なのではないでしょうか。*4 *5

そんな中でも、2020年に邦訳が出版された『SCRUMMASTER THE BOOK』(原題: The Great ScrumMaster)は、非常に近いテーマを扱う日本語書籍として貴重な存在でした。
その著者であるZuzanaさんが書いた二冊目の本にして、スクラムマスターというスクラム固有の役割のコンテキストにもとづかない、より普遍的なリーダーシップについて語る書籍が『アジャイルリーダーシップ』です。

Zuzanaさんが実際に接してきた組織やチームでの事例も数多く掲載されており、読んで「あるある」と感じるものもあれば、中には「そこまでやるの!?」と感じるものもあるかもしれません。
チームや組織をよりアジャイルにしていきたいと考えているひとにとって、きっとヒントが見つかる本だと思います。

ぜひ、書店で一度お手にとってみてください。
また、以下の公式ページの「関連情報」タブからまえがきが読めるので、書店に行く予定のない方はそちらからご検討いただけると嬉しいです。

www.kyoritsu-pub.co.jp

献本させていただいた椎葉さんが、早速書評ブログを書いてくださいました。

bufferings.hatenablog.com

最後にもう一つ。
12/7に、Forkwellさんのイベントでお話しすることになりました。

含蓄の深いこの本のエッセンスを30分に凝縮してお伝えしようと思っていますので、こちらもご参加いただけると幸いです。
アンケート回答者の中から抽選で30名に、書籍のプレゼントもあるようです。

forkwell.connpass.com

*1:多くのアジャイルラクティス関連書籍にはリーダーシップへの言及がありますし、アジャイルと親和性の高い技術リーダーシップの書籍としてはたとえば『エラスティックリーダーシップ』が挙げられます

*2:サーバントリーダーシップコーチング、ファシリテーション、その他マネジメント関連書籍など

*3:私はあまり深く関わったことがありませんが、スクラムマスターやアジャイルコーチのコミュニティではこういった話題が活発に取り上げられているものと思います

*4:私が知らないだけという可能性ももちろんあります。これぞという本をご存知の方がいらっしゃったら教えていただけると非常に嬉しいです

*5:余談ですが、つい最近立て続けに出た『マネジメント3.0』および『マネージング・フォー・ハピネス』は、マネジメントという切り口ながら、いずれもかなりアジャイルリーダーシップに関連の深い知見が集まった良書だと思います。正直、読んで感動しました(『The Agile Leader』を読んだときと同じくらい :))。そもそもZuzanaさん自身もマネジメント3.0のライセンスファシリテーターであり、マネジメント3.0の考え方から影響を受けた部分も大きいものと推察されます