この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

スカラ祭 2016 1 日目 : Scala を掘り下げたくなりました #ScalaMatsuri

この土日で開催されている ScalaMatsuri 2016 に参加しています。

日常業務ではほぼ 100% Java を使っていて、Java はそのエコシステムまで含めた総合力ではとてもナイスな言語だと思うのですが、どうしても他のよりモダンな言語に比べるともう一つ……というところもあって*1、じんわりと Scala の可能性を探る日々です。

そんなじんわりじんわりした中、一発大きなカンファレンスに参加したら色々とコトが前進するのでは、と一念発起して 1 万円の参加費をはたいて、スカラ祭に参加しています。
まだ 1 日目ですが、参加してとてもよかったと感じています。

以下、参加したセッションの感想を述べます。

セッション

本当は朝の 10:00 からがくぞさん(@gakuzzzz)のセッションがあったのですが、寝坊しました……。
土曜日に早起きはできない。

せめてもの罪滅ぼし(?)に、セッション資料だけでも紹介させてもらいます。

なぜリアクティブは重要か

というわけで、一発目は岡本 雄太さん(@okapies)のセッション。

Java 界隈でも著名な岡本さんのセッションを初めて見たのですが、噂に違わぬハイテンポなセッションでした。
わずか 40 分でリアクティブひとめぐり!

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とてもよく整理された内容と語り口で、聞いているときはなるほどなるほどと思っていたのですが、終わってしばらくたってみるとよく覚えていません。笑

記憶が追いついていないだけだと思うので、……スライドで改めて復習します。
スライドもやはりよく整理されていて、あとで見返すこともしやすいのがありがたいと感じます。

楽しく役立つ Scala リファクタリング

Wix 社の Tomer Gabel さん(@tomerg)のセッション。

表題の通り、Scala で書かれたあんまりいけてないコードを Scala の機能を活用しながらいけてるコードにリファクタリングする、という内容で、ライブコーディングも交えながらほどよいテンポで(笑)進みました。

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実際僕は Scala を始めたばっかりで、公式のチュートリアルをようやく七割がた終えたところという体たらくなのですが、そのレベルでも Scala らしいコードの書き方、Scala のよさを感じられるありがたいセッションだったと思います。

具体的には、ざっくり以下の二本立てでした。

  • "Stringly Typed"(「書式」を取り決めた文字列を引き回してあれこれするようなコード)を改善する
    • 文字列を渡して内部でパースするコンストラクタを、ファクトリ関数に置き換える
    • そのオブジェクトの使用箇所も、いい感じにパターンマッチを用いるように書き換える
  • Collection Abuse(コレクションの乱用)を改善する
    • インラインで処理をつなぎすぎているところへ、一時変数を導入したり、ローカルな関数を定義して名前をつける
    • タプルをやめ、ケースクラスを定義して要素に名前をつける

こうして見ると、普段から Scala を使っている人にとってはだいぶ基本的だったのかもと思いますが、僕のような初心者にとってはまさに求めていた内容でした!
英語がゆっくりでとても聞き取りやすかったのも助かりました。*2

バッチを Akka Streams で再実装したら100倍速くなった話

TIS の根来 和輝さん(@negokaz)のセッション。

MySQL からその日の取引情報を取り出して時刻順に並べて CSV ファイルに書き出す、という夜間バッチを、Rails による実装から Akka Streams に置き換えたことで 100 倍……どころか 295 倍速くなった、という話でした。295 倍。笑

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テスト用の環境とデータを用意して、ボトルネック(メモリ)を特定して、解消して、新しいボトルネック(CPU)を特定して……というパフォーマンス改善の正道をいくプロセスで Akka Streams に行き着いた、といったストーリーで、納得感のある内容でした。

ただ、15 分しかない枠だったこともあり、個人的には Akka Streams ならではの話というか、苦労したところとか、こういう問題があってこう解決したとか、なぜ他の言語やツールキットではなく Akka Streams を採用したのか、みたいな話を期待していたけれどそういうのがなかったのが、ちょっと惜しかったかな……という感もありました……というところまで書いて、そういえば最後に Tips のスライドがあったけれど時間がなくなって飛ばされていたことを思い出しました。
15 分では仕方ない、とは思いますし、この 15 分の枠というもの自体は、お昼すぎの眠たくなりがちな時間帯に軽いテンポをもたらしていてよかったと思うので、なかなか難しいところです。

アジアから Scala OSS に貢献するということ

退職にともなう連日の飲み会で声が……と言いながら始まった、瀬良 和弘さん(@seratch)のセッション。
退職自体はセッションの内容とは(たぶん)関係ありませんが、「エムスリーの瀬良さん」というイメージだったのでちょっとびっくりです。今後のご活躍も楽しみです。

さて、内容はというと、一言でいうと、日本人はもっと世界に出た方がいい、というメッセージを伝えるものだったと思います。英語で。*3

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瀬良さん自身は海外に住んだことがない、「ふつうの」日本人プログラマだけれど、Skinny FrameworkScalikeJDBC といった OSS を自ら開発・公開されたり、様々な OSS に貢献されたりしていて、みんなにもできるはずだ、やっていこう、という話でした。
もし自分のプロダクトを公開したら README も英語で書こう、ブログも英語で発信していこう、といったこともおっしゃっていました。

個人的に、「たしかに」と思ったのは、日本では日本語で読める技術書が豊富に出ていて、日本語のコミュニティも活発だけれど、それは(日本人一般が)英語が苦手であることの裏返しだ、ということです。英語が苦手だから、日本語の書籍が充実するし、充実しているから、英語が読めなくてもやっていける。
でも、また同時に、やはり英語ができた方が得られる情報も発信できる情報も増えるのは確かだと思います。この業界、とにかく第一線の一次情報が英語という場合が割合として非常に大きいので、英語を使ってコミュニケーションしていくということは、それが大きなコストのかかることであっても、やる価値があるし、これから先どんどんやらないといけなくなっていくだろうな、と感じています。

Scala コードは JVM でどのように表現されているのか

午後から始まった 15 分セッションの 3 本目にして最後は、関ジャバの会長である阪田 浩一さん(@jyukutyo)のバイトコードセッション。

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恥ずかしながら、このセッションに参加するまで Scala コンパイラが最終成果物として何を出しているのかのイメージをきちんと持っていませんでした。

ああ、言われてみれば当たり前なのですが。.class ファイルとして、JVMバイトコードを出しているのですね。
CAFE BABE から始まる、Java プログラマにはおなじみのやつです。

15 分セッションだけあってさすがに駆け足で進むのですが、バイトコードの基礎知識に始まって、trait、パターンマッチ、カリー化といった Scala ならではの記法がバイトコードでどう表現されるのかの解説までを、無駄なく、漏れなく駆け抜ける、見事なセッションでした。

バイトコードはこうやって読むんだよ」とか「javap 使おう!」とか、それだけなら 15 分でもやれると思うのですが、それらの内容もきっちりおさえつつ、Scala コードとの対応関係までわかるように解説するというのは……。

やはり、(なぜか)「イメージをきちんと持っていなかった」僕が「わかった!」という感動を得られたのは、実際の Scala コードとそのコンパイル結果のバイトコード(の javap -v の結果)をバシッと見せてもらったからだと思います。
おみそれしました。

あなたのScalaを爆速にする7つの方法

井上 ゆりさん(@iyunoriue)(と、インケンさん)のセッション。

爆速、爆速……と思いながら参加しましたが、がっつりベンチマーク取っての骨太な、でありながらかつクイズ形式で和やかに進むというお得なセッションでした。

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SSD 上の 2GB の Memory Mapped File の方が(同サイズのデータを扱う)memcached 1.4.0 より速い(memcached 1.4.0 では 1 キーあたりのデータサイズが 1MB 以下という制約がある!)とか、フィボナッチ数列の生成で Stream による実装の方が Array による実装の方が圧倒的に速い(Stream の方は値を 1 つしか取り出していなかったから! ずるい!)とか、なかなか意表を突くクイズも取り入れながら、単なる豆知識にとどまらない、Scala の奥深さを感じられる内容だったと思います。

個人的には、コレクションの性能周りの問題に、(Scala のコレクションのことはほとんど知らなかったのですが)C++ 時代の知識とコレクション名からの推測でだいたい正解できたのがなんかちょっと嬉しかったです。笑
でもまじめな話、データ構造なんてのは言語によってそうそう大きく変わるものではないので、こうやって知識が応用できる場合があるのもさもありなんで、プログラマというのは経験をきちんと積めば報われる職業だな、ということもちょっとだけ思ったりします。

あと、Scala はコレクションの性能特性が公式ページに一覧化されている、というのもステキですね。

一目瞭然です!

The Zen of Akka

JavaOne 2015 では Java 9 に入る予定の Reactive Streams の話をされていた、Typesafe 社の Konrad Malawski さん(@ktosopl)のセッション。

同時間帯の関数型ドメインモデリングのセッションもちょっと気になっていたのですが、概要に「ドメインの代数がモノイド、函手、モナドといった圏論的な構造から構築できるか試してみる」みたいな文字列を見つけて(あっ……)と思ってこちらに逃げてきました。

このセッションは、「Akka という考え方」とでもいうべき、Akka とうまく付き合うためにどう考え、どうすればいいかが詰まった内容でした。

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そもそも Akka を使ったことも使おうと思ったこともないので*4、Akka そのものとのマッピングはできていないのですが、それぞれの特徴的な考え方から Akka の輪郭が浮かび上がってくるようなセッションでした……いや、まじめな話。笑

実際に使っている人にとっては、なおさら面白い内容だったのではと思います。
いつか使う(使おうとする)日が来たら、きっと思い出すことになるでしょう。

Scalaドメイン駆動設計に真正面から取り組んだ話

本日最後は、MOTEX の藤井 善隆さん(@yoshiyoshifujii)のセッション。

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藤井さんは Scala を始めてからまだ 7 か月、チームも似たような感じということで、にもかかわらずドメイン駆動設計というチャレンジも重ねて、苦労しながらの、進行中の知見を共有する、ということで、かえって僕のように知識も経験もない人にも共感できるところの大きい内容だったと思います。

特に面白いと感じたのは、「どうしてもレイヤ感で責務が漏れてしまう」といった課題に対して「チームでどうするか決める」「コードレビューやモデリング(のレビュー)で対処する」「定常的にリファクタリングし続ける」といったプロセス的な解決策が色々上がってきたところです。現場感がありました。

一方で、CQRS(Command Query Responsibility Segregation)の考え方を適用して、クエリ(データの取得)については限定的に Query Model としてレイヤ間を飛ばして扱えるようにする、という技術的な解決策も出ていたり、Query Model に対して Command Model はあくまでレイヤー化アーキテクチャを守る、という判断があったり、結局こちらも現場感なのかもしれませんが……ドメイン駆動設計で開発することになったらきっと同じことで悩むのだろうな、と感じられる、学ぶところの大きい内容だったと思います。

その他雑感と一日目のまとめ

そんなわけでスカラ祭初日はとても充実した一日でした!
セッション終了後の懇親会も楽しみました。

参加費 1 万円を支払った甲斐は十分あったと感じます。
冒頭や本文中にも述べたように Scala は全然始めたばかりなのですが、初心者でもそれなりに理解できて、かつ奥行きもある質の良いセッションが多かったのではないかと思いますし、会場も全体としては広く、時間的なゆとりもあり、水や、お菓子やコーヒーといったちょっとしたサービスもとてもありがたかったです。

何といっても Scala を使っている・使おうとしている人たちが 500 人ばかりも一堂に会する場所に集まって(そんな場所が日本にあるのです!)、その空気を吸うことがとてもいい刺激になっています。
この辺は JavaOne に参加したときの感想にも近いところがありますね。

それから、Scala やっぱりいい言語だな、と思います。
まだ半分お試しのつもりでしたが、Scala をちょっとまじめに掘り下げてみたくなりました。

二日目は主にアンカンファレンス形式ということで、いったいどうなるのか若干不安もありますが笑、それ以上に楽しみです!

追記 : 2 日目も行ってきました

enk.hatenablog.com

*1:Java に限らず、Scala も含むすべての言語には得意不得意があるわけですが

*2:僕は利用しませんでしたが、今回の ScalaMatsuri では、多くのセッションで同時通訳もついていました

*3:ScalaMatsuri のセッションはそもそもだいたい日英半々で、日本人で英語の発表をされている方もいたのですが、瀬良さんの場合は特にそのメッセージと重ねていたところが大きかったのだろう、と思います

*4:Scala 界で有名なライブラリ群、くらいの認識

2016 年の目標

2016 年の目標を立てます。

2016 年の目標

2016 年になってから、実家でごろごろしたり、ごろごろしたり、ごろごろごろごろごろごろしたり、さすがにごろごろするのに飽きてちょっと散歩したり、フェリーと電車と新幹線を乗り継いで 10 時間かけて東京に戻ってきながら本を 1 日に 5 冊読んだりするなかで*1、ぼんやりぼんやりと今年の目標について考えてきました。

ぼんやりぼんやりした中から浮かび上がってきた、次の 2 つのことを今年の目標にしようと思います。

  • 全力で走る
  • 手入れして生きる

全力で走る

比喩です。

全力で走るというのは、ものごとをやって、やって、やり抜くという意味です。

ものごとというのは、今のところ、主にしばいとソフトウェア、です。(うたはお休み中)

もちろん、生きていると、しばいとソフトウェア以外のことも色々とあります。
それらについても、手を抜かない。

ここ 3 年ほど、色々と助けてくれた人たち、力になってくれた人たちや、まあ自分でも自分なりに行った努力などのおかげで、心身が安定して、全力で走っても大丈夫になったと感じます。
しばいとソフトウェアのことを、充実してきた心身にまかせて、ビシバシやりたいと思っています。やりたいことがひとつの 2 倍でふたつあるから、余計にリソースを突っ込まなくては、という思いもあります。

それから、この一年でだいぶものごとがよく見えるようになってきて、もちろん昔に比べたらということですが、あまり細かく目標を決めたり、管理したりしなくても、うまく走れるんじゃないか、これもたとえですが、うまく行きたいところへ、もし目標を決めるとしたらそうと決めていたようなところ、そのちょっと先くらいのところへ、自然と行けるんじゃないか、という予感があります。*2

一度これでやってみようと思います。

走って、走って、あわよくばたまに飛ぶことができれば。

手入れして生きる

これはあながち比喩というわけでもないです。

全力で走れるようになった(と思う)とはいえ、そんなことをすると、走る速さにおそらく比例して、色々なクズやらほころびやらが出ます。これは比喩です。
たとえば部屋は荒れるでしょうし、頭の中も荒れるでしょうし、下手をすると人間関係も荒れるかもしれません。

だから、こまめに手入れをして生きようと思います。

具体的には部屋の掃除だってするし、ものの手入れもするし、古くなったものは入れ替えるし。心身の状態にもこまめに気を配る。
積みすぎている本やら CD も何とかする、まとめてじゃなくて、少しずつ。人づきあいも、ここしばらくちょっとルーズにしすぎた感もあるので、もう少しだけ気を使ってみる。

こまめに手を入れることは、走ることに対しては、少なくとも走ることが持ちうるエネルギーの総量に対しては多少のブレーキになる可能性もありますが、この先も続けていくために必要なことだと考えます。
本当は少し荒らしてみたい気もしているのですが。まあ、本当に本当に全力で走れば、自ずと荒れるでしょう。荒れすぎると、壊れます。それはまずい。

手入れ、という言葉は養老孟司さんの何かの本からもらいました。
里山はほったらかしの自然ではなくて、人間が手入れすることでできあがる、みたいな話だったと思います。

この一年で、全力で走ることと、手入れして生きることのバランスを高いところでうまく取れるようになって、この一年の先も生きていけたらいいなと思っています。

今年も生きます

というわけで、2016 年の目標は、

  • 全力で走る
  • 手入れして生きる

の 2 つです。

すごくシンプルなのでちょっと不安もありますが、まあこの先もしばらく続く(蓋然性がそれなりに高い)人生のうちの 1 年間、これでやってみるのも悪くないでしょう。

続くといいなあ。

本編が短くすんだので久々に言っておくと*3、生きることは大前提、当たり前ということではなくて、まず第一に行うべきことです。

2016 年も生きます。

補遺

補遺 1 : 忘れていたもう一つの目標(のかけら)

先にあげた二大目標に並べるまでではないのですが、少し社会に目を向けたい、ということも思っています。
社会に目を向けるというのはまた漠然とした言い回しですが、年末にふりかえりをするときのフックになればいいと思って、書き残しておきます。

自分のことはすっかり充足してきたので社会を見た方がいいな、という感じがここしばらくしているのですが、まだ入口も出口も見つかっていないのが現状です。
まあ、社会とか大きなことを言う前に、もう一度身のまわりの人たち、近しい人たちに目を向けることから……なのかな。

補遺 2 : 最後に一つだけいらないことを

今年の目標、特に「手入れして生きる」の方は我ながら実に常識的でまっとうな目標だなと思っていて、それがなんだかつまらないな、ということを少し思います。
「本当は少し荒らしてみたい」と言ったのも、たぶんそういうことです。

それなりに足掻いてようやく獲得した(つもりの)常識、まっとうさを「つまらない」というのはまったく……という感じもしますけど。
一年後にどう感じているか、どう考えや行動が変わっているか見てみて、また考えたり、あるいは考えなかったりしたらいいかなとも思います。

*1:記憶にある限りでは自己新記録でした

*2:一方で、これを書きながら、逆に言うといま一年後の具体的な目標が定まっていないんだな……ということに気づきましたが、まあ……大丈夫でしょう、たぶん

*3:3 年くらい前は「生きます」みたいなことばっかり言っていた気がします

2015 年 11 月~ 12 月に読んだ本(Soft Skills、究極の鍛錬、融けるデザイン ほか)

11 月から英語の本を読み始めたらガクンとペースが落ちてしまいました……。
ので、2 ヶ月まとめてお届けします。

終わってみれば、クリティカルヒットがバシバシ出て、すばらしい読書生活でした。

11 月~ 12 月のよかった本

Soft Skills

Soft Skills: The Software Developer's Life Manual

Soft Skills: The Software Developer's Life Manual

これはたいへんな本でした。
詳細は以下の記事にて。

enk.hatenablog.com

究極の鍛錬

究極の鍛錬

究極の鍛錬

かつてゲーム音楽を作る人になりたいと思って、自分なりに才能みたいなものと格闘してきました。

当時考えていたのは、「とにかくプロになりたい」ということで、なぜなら、プロになれば、生きることのリソースの大部分をそれに注ぐことができて、長期間にわたって能力を開発し続けることができて、やがてよりよいものを生み出せるようになると考えたから。
でも、努力が足りなくて、プロにはなれませんでした。

この本を読むと、その考えや当時していたことの一部が当たっていて、一部が間違っていたということがわかります。

才能は過大評価されている

この本の原題は「Talent is overrated」で、「才能は過大評価されている」という意味です。

「才能」という言葉を聞いて人が思い浮かべるものは案外様々だと思いますが、この本で「Talent」とされているものは、割と限定的で、「(遺伝的な理由などで)生まれつきその身体に備えている能力」のことです。
そして、今の世の中ではそれが過大評価されている。

明らかに生まれ持った才能が溢れ出しているみたいに見える人でも、実は「生まれつきその身体に備えている能力」よりはむしろ、その生まれ育った環境、そしてその環境が可能にした「究極の鍛錬」がその能力をかたちづくっている、ということを著者は明らかにします。

究極の鍛錬の 5 要素

著者は「究極の鍛錬」が備える 5 つの要素を説明します。それは、以下の 5 つです。

  • 実績向上のために特別に考案されていること
  • 何度も繰り返すことができること
  • 結果へのフィードバックが継続的にあること
  • 精神的にはとてもつらいこと
  • あまりおもしろくないこと

これだけだとなんのことかわからないかもしれません。

でも、この本の論理を丁寧に追うと、能力を得るために

  • 長時間の努力が必要であること(若くして成功する人は幼少期から鍛錬を始めている)
  • ただ時間をかければよいわけでもなく、よく工夫されたものである必要があること(年をとれば誰でも能力が身につくわけじゃない)
  • その努力ははっきり言って苦痛であること(だから誰にでもできるわけじゃない)

そして、

  • 世の中で素晴らしい能力を発揮している人は誰でもこの「究極の鍛錬」を経ていること

がよくわかります。

この本の主張に照らすと、僕が当時思っていたことで当たっていたのは「(かけた時間が成果につながるから)とにかくプロになるべし」ということ、間違っていたのは「自分にはそれほどの才能がなさそうだ」と思って(あるいは、矛盾するようですが、「才能があればいずれにせよ芽が出るはずだ」と思って)、どこかプロになるための努力を中途半端にしてしまったこと、です。

才能について悩んだことのある人、また今悩んでいる人はぜひ一度読んでみるべき本だと思います。

融けるデザイン

融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

融けるというのはどういうことだろう、「透明なインタフェース」や、直前に読んだ『さよなら、インタフェース』で主張されていた「NoUI」のようなことだろうか、と考えながら読み始めました。

結果として、そのどちらにも似ているようで少し違った、しかし僕の考え方、ものの見方の深いところを触って、変えてくれるようなスゴい本でした。

情報の身体化

本の中では、著者自身が行った実験の成果を踏まえながら、色々な考え方を紹介していくのですが、中でも「情報の身体化」という考え方には衝撃を受けました。

短い言葉で説明することは難しいのですが、あえて言うなら、「よい UI は、インタフェースそのものをデータ側に移動させるようなものである」ということだと思います。

たぶん全然うまく説明できていないと思いますが……。
身体と対象物(情報)の二元論で捉えるのではなくて、両方をひとまとめでとらえる(情報の身体化)という考え方ができるということに震えました。
それもただ机上で考えただけのことではなくて、実践をともなっているので、理解もしやすく、また想像力もかきたてられます。

人間の生活をよくするものを生み出すために

小難しい概念をこねくり回す本かといえば、決してそんなことはなかったと思います。

繰り返すようですが、具体的な実験やプロダクトを例にあげながら、基本的には身近なところで議論が展開されます。

僕がソフトウェア業をしているのは、(お金を稼ぐためということを除けば)人間の生活をよりよくすることに大きく貢献できる(可能性がある)と信じているからなのですが、同じような理由でソフトウェア業をしている人は(あるいは、ハードウェア業をしている人も、産業によらず何かをつくる人は誰でも……)、ぜひとも読んでほしい本です。

この本には、世界から人間の生活を悪くするプロダクトやサービスを減らして、よくするプロダクトやサービスを増やす力があると思います。

読書メーター

11 月

2015年11月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:758ページ
ナイス数:12ナイス

考えるヒト (ちくま文庫)考えるヒト (ちくま文庫)
読了日:11月4日 著者:養老孟司
やわらかな言葉と体のレッスンやわらかな言葉と体のレッスン
読了日:11月7日 著者:尹雄大
新エバンジェリスト養成講座新エバンジェリスト養成講座
読了日:11月9日 著者:西脇資哲
True and False: Heresy and Common Sense for the Actor (Vintage)True and False: Heresy and Common Sense for the Actor (Vintage)
読了日:11月12日 著者:DavidMamet

読書メーター

12 月

2015年12月の読書メーター
読んだ本の数:24冊
読んだページ数:6348ページ
ナイス数:16ナイス

方法序説 (岩波文庫)方法序説 (岩波文庫)感想
およそ400年前に真実を探し求め、また伝えようとした人の記録、というか苦闘そのものでした。
読了日:12月5日 著者:デカルト
ミステリヤ・ブッフ (マヤコフスキー叢書)ミステリヤ・ブッフ (マヤコフスキー叢書)
読了日:12月6日 著者:マヤコフスキー
反応しない練習  あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」感想
この本に書いてあることは本当です。(体験談)
読了日:12月7日 著者:草薙龍瞬
読書の腕前 (光文社知恵の森文庫)読書の腕前 (光文社知恵の森文庫)
読了日:12月10日 著者:岡崎武志
エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイドエンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド
読了日:12月10日 著者:竜盛博
Soft Skills: The Software Developer's Life ManualSoft Skills: The Software Developer's Life Manual感想
プログラマ向けの自己啓発書です。情熱プログラマーあたりにも通じるものがありますが、より実践寄りというか、ページ数が多いだけあって、読者を説得するところから具体的な実行手順を示すところまで親切にきっちりカバーされている印象でした。また、お金の扱い方のことや健康のことにもそれぞれ章が割かれているなど、技術と直接関係のない領域まで幅広くカバーしているのも特徴的で、まさにlife manualという感じです。
読了日:12月12日 著者:JohnZ.Sonmez
ハイデガー哲学入門──『存在と時間』を読む (講談社現代新書)ハイデガー哲学入門──『存在と時間』を読む (講談社現代新書)感想
とりあえず原著がめちゃくちゃ難解だということがわかった。日本語で読んで理解するのは多分不可能で、解説書を駆使しまくるか、ドイツ語をマスターするか、その両方か、一生読まないかも……。でも、その難しい本でやろうとしたことや、いちいち難しい用語の意図するところは(それなりに)掴めた気がします。根気強く丁寧な入門書だったと思います。
読了日:12月13日 著者:仲正昌樹
僕たちはガンダムのジムである (日経ビジネス人文庫)僕たちはガンダムのジムである (日経ビジネス人文庫)
読了日:12月15日 著者:常見陽平
SNOOPY COMIC SELECTION 70's (角川文庫)SNOOPY COMIC SELECTION 70's (角川文庫)
読了日:12月15日 著者:チャールズ・M・シュルツ
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)感想
アメとムチが前世紀の遺物であり、私たちがふつう期待するようには機能しないことを痛快なまでに喝破する本です。マジかーという感じです。では、どうすれば? ということまでしっかり書いてあるので、すごく便利です。
読了日:12月17日 著者:ダニエル・ピンク
書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)
読了日:12月18日 著者:寺山修司
sisterssisters
読了日:12月19日 著者:長塚圭史
究極の鍛錬究極の鍛錬感想
かれこれ15年くらい、才能や人間の能力についてあれこれ考えては、そう信じたり、あるいは謎に思ったりしていたことごと、それらの点と点のすべてを美しくつないでくれた、僕にとって記念碑的な本でした。そういうことだったんだ、と深く腑に落ちました。わからないことについては「まだわからない」とはっきり記しているところも、誠実で、好感が持てます。
読了日:12月21日 著者:ジョフ・コルヴァン
リモートチームでうまくいく マネジメントの〝常識〟を変える新しいワークスタイルリモートチームでうまくいく マネジメントの〝常識〟を変える新しいワークスタイル感想
「在宅勤務」「リモートワーク」ではなく「リモートチーム」という考え方、そしてその実践のあり方を紹介する面白い本です。
読了日:12月21日 著者:倉貫義人
チームのことだけ、考えた。―――サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったかチームのことだけ、考えた。―――サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか
読了日:12月23日 著者:青野慶久
ケラリーノ・サンドロヴィッチ 消失/神様とその他の変種 (ハヤカワ演劇文庫)ケラリーノ・サンドロヴィッチ 消失/神様とその他の変種 (ハヤカワ演劇文庫)
読了日:12月25日 著者:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力 (講談社現代新書)ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力 (講談社現代新書)
読了日:12月25日 著者:池田純一
さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法感想
その通り、重要なのはインターフェースじゃない。とわかっているつもりでも、やっぱりふだん、知らず知らずのうちにインターフェースを軸に考えてしまっていることに気づかされました。デザイナも開発者も、みんな一度は読んでみてほしい本です。
読了日:12月26日 著者:ゴールデン・クリシュナ
融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論感想
情報の身体化! 今まで自分なりにUIだとかUXだとかのことを考え続けてきたつもりでしたが、強烈なパラダイムシフトを引き起こしてくれるすごい本でした。すべてのデザイナ、エンジニアに読んでほしい。そうすればきっと、世界を悪くするプロダクトが減って、よいものが増えると思います。
読了日:12月27日 著者:渡邊恵太
改訂2版 基礎からわかる Go言語改訂2版 基礎からわかる Go言語感想
Goのことをサクッと学べる良書です。特にC/C++をやったことのある人なら「そういうことね」という感じであっという間に読めて、普通にGoが書けるようになると思います。
読了日:12月27日 著者:古川昇
世につまらない本はない (朝日文庫)世につまらない本はない (朝日文庫)
読了日:12月28日 著者:養老孟司
君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)
読了日:12月28日 著者:津村記久子
作家の収支 (幻冬舎新書)作家の収支 (幻冬舎新書)
読了日:12月28日 著者:森博嗣
なぜヤギは、車好きなのか? 公立鳥取環境大学のヤギの動物行動学 (朝日文庫)なぜヤギは、車好きなのか? 公立鳥取環境大学のヤギの動物行動学 (朝日文庫)
読了日:12月29日 著者:小林朋道

読書メーター

量から質へ、さらっと読める本から歯ごたえのある本へ、またインプットからアウトプットへ、徐々に移行していきたいな〜と思っているので、この読書記録のつけ方も今後ちょっと変えるかもしれません。

2015 年のふりかえり

2015 年のふりかえりをします。

目標

年初に立てた 2015 年の目標は、以下の 3 つでした。

  • 美しいものにたくさん触れる
  • ものごとを見通す力をつける
  • 「データ連携」と「手触りのよいソフトウェア」に投資する

enk.hatenablog.com

詳細は、それぞれの項目のふりかえりで簡単に示します。

ふりかえり

目標ごとにふりかえっていきます。

目標 1 : 美しいものにたくさん触れる

美しいもの、自分が美しいと思うもの、美しいと思えそうなものにたくさん触れるようにする。
もちろん、ただ日常生活を送っているだけでも、世界は美しいもので溢れかえっている。でも、今年はそれに甘んじず、言ってみれば筋トレのようなつもりで、たくさんの美しいものに触れてみたいと思う。
より具体的には、音楽、美術、詩、小説、映画、舞台芸術、等々のいわゆる芸術作品(エンターテインメント作品も含む)に積極的に、たくさん触れるようにする。

触れましたとも……。

どれくらい

音楽

  • CD と iTMS あわせてアルバム 10 枚くらい買った *1
  • ライブやコンサートに 6 ステージくらい行った

美術

  • 展覧会に 4 件くらい行った

詩(短歌を含む)

  • 詩・短歌を 8 冊くらい読んだ
  • 評論・作歌論等を 4 冊くらい読んだ

小説

  • 14 冊くらい読んだ

映画

  • 10 本くらい観た(うち DVD で観たものが 7)

舞台芸術

  • 演劇を 63 ステージくらい観た(うち映像で観たものが 4)
  • ダンスを 3 ステージくらい観た

63 て。
うける。

その他

  • 戯曲を 18 冊くらい読んだ
  • その他演劇関連の本(評論、手引書等)を 27 冊くらい読んだ
  • エッセイとかも色々読みました
  • 漫画もちょいちょい

目標 1 のまとめ : 美しいものにたくさん触れた(達成度 : 90%)

たくさん触れました。

特に演劇周りがちょっと大変なことになりました。出会ってしまいました。
年初の時点ではまったくこんなつもりじゃなかったんだけど。

目標の達成度は 90% としたいと思います。
総量ではよくやったよという感じですが、こうして見るとジャンルの偏りがちょっと極端だったな、というのが反省点です。

おおむね目論見通り、入れまくったものがだいぶ自分のなかで熟してきて、ふつふつしてきているので、少しずつアウトプットに転換していきたい、と考えています。*2
インプットのペースは多少は絞りつつ、極端には落とさないように気をつけつつ、という按配で。

目標 2 : ものごとを見通す力をつける

自身が他者を理解するため、また他者に理解されるための手段として、ものごとを見通す力をつける。
あるいはもしかしたら、他者が他者を理解するための手段を知るための手段として。
基本戦術としては、これは実のところ昨年もやっていたことなのだけれど、本を読むことになると思う。
本を読むことによって、
・知識が増える(自分以外の人間のものの見方、考え方、持っている背景がわかる)
・考える力が増す(自分以外の人間の発言を深く、正しく理解できる)
といったことを企図する。

読みました、たくさん、たくさん。

どれくらい読んだか

今年読んだ本が、全部で 192 冊。

うち、前項の「美しいもの」カテゴリに属する(ことにした)本が 90 冊くらい。
そして、のちに触れる「技術書・仕事本」に属する本が 33 冊くらい。

ほか、いくらかは一種の実用書みたいなのもありますが、大半はこの目標 2 に資する本だったかなと思います。
とすると、ざっと 70 冊くらいでしょうか。

詩や小説、エッセイだって自分以外の人間のことを(あるいは自分のことも)わかるための糧にはなりますし、正確な数はわかりませんが、よく読んだ、と言ってよいと思います。

どんな本を読んだか

やはり「ひとを理解する」とういことを目指していることもあってか、コミュニケーション論や身体論の本が多かったです。

といっても、これは演劇にかかわる人たちが得意とするところでもあるので、一挙両得というか、シンクロニシティというか、シナジーというか……、とにかく、我ながらぐんぐん吸収しました。
鴻上さんの本とか、平田さんの本とか、あとは竹内敏晴さんという、かつて舞台の演出をされていた方の本にも強い衝撃を受けて、その後彼の著作のセレクションシリーズを買い集めたりもしました。

ジャンルとして何にあたるのかはわかりませんが、『愛するということ』も再読しましたし、なんとなく手に取った『自殺しないための99の方法』というのがすごくいい本だったりもしました

それから養老孟司さんの本、これもある意味身体論みたいなところがありますが、『唯脳論』がクリティカルヒットで、そのあといくつか読みました。
これも嬉しい出会いでした。

閑話 : コミュニケーション論が流行っているのかも

余談ですが、次の 2 つの本がたしかジュンク堂池袋店の何かのランキングで 2 トップになっていて、なんか、流行ってるんだなというか、そういう不安や課題を感じている人が増えているのかな、ということも思います。

あなたは、なぜ、つながれないのか

あなたは、なぜ、つながれないのか

やわらかな言葉と体のレッスン

やわらかな言葉と体のレッスン

どちらもなかなかいい本でした。
こういう話題に明るくない人には、いい手引きになるのでは、と思います。

哲学の本とか

あとは、ちょっとだけ哲学の本とか。
デカルトとかハイデガーとか。基礎(というか、「参照されるもの」)にあたるところから少しずつ埋めていけたらいいかな……と思っていて、カント、デカルトハイデガーは少しだけ(いやほんとうにほんの少しずつだけ……)わかるようになりました。

哲学の本といっても新書とか文庫とかの入門書を読んでいるだけなのですが*3、そこに書かれていることのレベルでは理解できていると思います。
これは我ながらなかなかのことで、数年前なら、一応日本語を読むことはできても、たぶん理解すること(「そういうことか」と思うこと)はできなかったでしょう。

読むことで、読む力がついて、読めるようになった、と考えています。
このあたりのことは、ここ 3 年ほどの読書の一つの到達点と言えると思っています。

目標 2 のまとめ : ものごとを見通す力が多少はついた……と思いたい(達成度 : 80%)

というわけで、目標の達成度は 80% ということにします。

数もまずまずですし、(これは今年だけのことではないのですが)前項でも書いたように、一つの壁を越えたかな、という感じがします。
昔いた大学で、同級生や先輩たちの言うことを聞いて、どうしてこの人たちはこんなにものごとをよく見通せるのだろう、と魔法を見るかのように感じていましたが、今ようやく当時の彼らに追いつけたり、追いつけなかったりしているかな、という感触があります。彼らが言っていたことが、今なら少しはわかる気がします。

追いつけたり、追いつけなかったりということで、ほどよく 80% ということにしておきます。
もちろん 80% 見通せるというわけでもなくて、今年の目標の範疇で、ということですが。

本の数で何もかもわかるわけではないですが、世の中には何千冊何万冊と読んでいる人もいるわけで、僕の読書量が(およそ 5 年前に記録を始めてから)だいたい 600 冊なので、まだまだ先に色々色々あるのだろうな、とも思います。

目標 3 : 「データ連携」と「手触りのよいソフトウェア」に投資する

...具体的なアクションとしては、(なんだかこればかりだけれど)やはり本を読んでそれを実践する、ということが中心になると思う。
ただし、特に以下のような観点を持って本を選び、また読む。
・基礎体力(アルゴリズム、設計やテストなどのソフトウェアエンジニアリング全般、計画やマネジメント)
・データ連携(文字コード技術やネットワーク、セキュリティ等)
・手触りのよいソフトウェア(UI/UX のための時間を作り、その時間を投入することで手触りのよいソフトウェアが実現できる)
こういった、どちらかといえば広く浅い学習の過程で、より深くコミットしたい領域を見つけることができれば、と思っている。

この目標の達成度については、議論を呼ぶところです。

読んだ本のリスト(33 冊)

本ということでいうと、技術書は以下の 15 冊でした。

また、チームのことや、プレゼンテーションの本、その他ビジネス書等、技術書ではないが仕事に直接かかわる本として、以下の 18 冊を読みました。

  • 究極の会議
  • ピープルウェア 第3版
  • 熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理
  • TEDトーク 世界最高のプレゼン術
  • 仕事は楽しいかね?
  • 小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
  • 会議が絶対うまくいく法
  • ガー・レイノルズ シンプルプレゼン
  • 情熱プログラマー ソフトウェア開発者の幸せな生き方(再読)
  • プレゼンテーション・パターン: 創造を誘発する表現のヒント(再読)
  • マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた
  • ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?
  • エバンジェリスト養成講座
  • エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 - 渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド
  • Soft Skills: The Software Developer's Life Manual
  • リモートチームでうまくいく マネジメントの〝常識〟を変える新しいワークスタイル
  • チームのことだけ、考えた。 - サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか
  • ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力

投資はしたけれど、それが「データ連携」と「手触りのよいソフトウェア」だったかは少し疑問

そこそこ読んでいますし、ただ読んだだけではなくて、会社で業務とは別のちょっとしたプロジェクトを立ち上げたり、Eclipse Collections やら Go やら触ってみたり、(会社のおかげですが)JavaOne2015 に参加したりと、「ソフトウェア業にまつわる活動」という意味ではかなり活性化できたと思います。
駆け込みではありますが年末に UX / UI 周りのイカした本を二冊(『さよなら、インタフェース』と『融けるデザイン』)読んで、強い影響を受けたりもしました。

ただ、「基礎を固める」という当初の目標にはそこまでコミットできなかったな、というのが正直なところです。
目標が変わったとも言えるかもしれません。

目標 3 のまとめ : ソフトウェア業がんばってはいる、基礎も少しずつ(達成度 : 50%)

目標そのものからはずれたものの、そこそこがんばれたと思う、とはいえ目標そのものは達成できていない、ということで、目標の達成度は暫定的に 50% とします。

基礎がだいじであることはもちろん変わらないので、これからも少しずつでもおさえていきます。*4

と同時に、具体的にやりたいことがいくつか出てきているので、基礎だけにこだわらず、興味のおもむくにまかせて精力的にソフトウェア業やっていけたらそれもいいかな、とも思っています。

フリースタイルでふりかえる 2015 年

ここまで、年初に立てた目標とその達成度を確認しながらふりかえりをしました。

最後に、目標に関わる関わらざるによらず、2015 年そのものをふりかえってみます。

2015 年のいろいろツイート集

やり方はいくつかあると思いますが、思ったこと・やったことで大事なことは結構ツイッターで何か言っているので*5、発言を拾ってみます。

自分で選んでいたい。

このときはまだ芝居どハマりしてなかった。

ほぼ日手帳初めて使い切りました。
前回は一年の中ごろで挫折しました、たしか……。あの頃は予定がなかったんだな。

そろそろ控えた方がいいかなと感じています。

今はもうこういうガツガツした感じじゃなくなってきました。
といっても、他者をわかるようになった、ということは(もちろんというべきか)なくて、どうわかることの可能性があって、どうわからないか、ということがわかってきた感じです。

少しずつ見えてきた気はします。
UI(あるいは NoUI)は、やっぱり重要です。

養老孟司さんの「現実」の定義(「数学は数学者にとっては現実」)とか、『融けるデザイン』で語られていた「自己帰属感」とか、少しずつ違った言葉も見つけつつあって、良好です。

その通りなのですが、当時はそんなことすらいちいち発見していました。

そんな日が来るなんて想像したこともなかった。

あなたがたが悪い。

もう遅い。

のちに、世界のすべてがわかることは当分ないな、ということがわかるので、当分死なずにすみそうです。

これを数ヶ月後に唯脳論が(一応のところ)片付けてくれました。
世界は脳より広い!

今は、このときよりももっと。

こんな時期もありました。
これを越えたところが今なのだな、と思うと納得感があります。

短歌には結局ちょっと引っ込んでもらいました。
また出てくることもあるかしら。

数ヶ月に一回行ってドカ買いするのが恒例化してきました。
だいたい 1 万円分買うと(ポイントカード制)併設の WEEKENDERS COFFEE All Right の 400 円分のカフェチケットがもらえて、 それがとてもおいしいのも嬉しい。

カッコいい大人になって長生きして死にたい。

結局腰入れてってほど観ませんでした。
が、まあこれからもぼちぼち観ていくかな。

このときから座右の銘を「みんな死ぬ」にしました。

今までは、わかってなかったんです。
でも世の中、わかってない人も少なくないとおもいます。

思います。
演劇のすそ野を広げていく仕事というのも、たのしそうだ。

15 年かかりました。

最近はもうねじれまくってよくわからなくなっています。

当面は全力でいきたい。

そもそも日本を出るのが初めてだったし、これは大きかった。

芝居を始めたのもそりゃあまあ、大きかった。

渋谷と和解した。

フェースブックとも和解した。

野田秀樹とも和解した。

もうしばらくはこれでいく見通しです。

Soft Skills に出会ったのも大きかった。

刈り取りの季節が来ています。

いそがしくしていました。

まとめ

まとめると、総じてここ数年、長い目で見れば十数年、足掻いてきたことごとが実を結びつつあって、この 2015 年で何か一区切りついた感じがします。

それと同時に、芝居を始めてみたりだとか、また新しいことも始めることができていて、なかなかバランスよく生きることができているかな、と思います。

そういう年代なのかもしれません。

せっかく勝ち取ったバランスなので、大事にしつつも、せっかく基礎が安定しているのだから、バランスを崩すようなこともバシバシ……とは言わないまでも、少しずつやっていけたらいいかなと思っています。

来年のことはまた来年。

*1:年間 100 枚以上とか買ってた頃を思うと隔世の感がありますが……

*2:2015 年の時点でちょっと漏れて、芝居に出たりもしてました

*3:方法序説』だけは読みました、薄かったので

*4:今年もまったくやらなかったわけじゃない、読了はしてないけど読みかけの本もいくつかあるし……

*5:最近言わなくなってきたので来年はないかもしれませんが……

鑑賞記録 2015 年 8 月~12 月

どえらい久しぶりの鑑賞記録です。
9 月から、所属する劇団 *1 の稽古が土日祝昼夜の期間に入ったこともあって、たっぷりためてしまいました。

公演は、11 月に無事終えました。
3 月に始めて、当たり前ですが、まったく、まだまだです。

でも、面白かったと言ってくれた人もいて、救われました。
劇団自体は 20 年続いていることもあって、たしかに面白いと思います。(観て面白いと思ったから入った)

観た芝居

閑話休題
8 月から 12 月までで、観た芝居が通算 26(うち映像が 4)、音楽 3、映画(DVD)2、展覧会 1。
おまけで、出た芝居が 1。

8 月

わが娘

  • 月刊「根本宗子」
  • 8/16(日)16:30~@BAR 夢

ホーボーズ・ソング HOBO'S SONG ~スナフキンの手紙 Neo~

地獄谷温泉 無明の宿

9 月

NINAGAWA マクベス

海辺のカフカ

10 月

電車という名の欲望

  • 本能中枢劇団
  • 10/6(火)19:30~@下北沢 OFF・OFF シアター

闇に咲く花

キンダーガートン・コップ

  • ナカゴー
  • 10/22(木)20:00~@上野小劇場

今、出来る、精一杯。

  • 月刊「根本宗子」
  • 10/23(金)19:30~@テアトル BONBON

11 月

超、今、出来る、精一杯。

  • 月刊「根本宗子」
  • 11/5(木)19:30~@テアトル BONBON

オレアナ

  • 作 : David Mamet
  • 11/20(金)19:00~@PARCO 劇場

青いプロペラ

  • らまのだ
  • 11/22(日)14:00~@space EDGE

ミステリヤ・ブッフ

  • 地点×空間現代
  • 11/26(木)19:30~@にしすがも創造舎

お召し列車

12 月

水仙の花

  • 城山羊の会
  • 12/8(火)19:30~@三鷹芸術文化センター 星のホール

われらの血がしょうたい

  • 範宙遊泳
  • 12/10(木)19:30~@のげシャーレ

とりあえず、お父さん

  • 作 : Alan Ayckbourn
  • 12/13(日)13:00~@天王洲 銀河劇場

書を捨てよ町へ出よう

ライン(国境)の向こう

  • 劇団チョコレートケーキ with バンダ・ラ・コンチャン
  • 12/19(土)14:00~@東京芸術劇場 シアターウエスト

ピノキオ

  • 劇団ほおずき
  • 12/20(日)15:00~@府中グリーンプラザ けやきホール

TWINS

  • 作・演出 : 長塚圭史
  • 12/21(月)19:00~@PARCO 劇場

消失

  • ナイロン 100 ℃
  • 12/24(木)14:00~@本多劇場

映像(DVD)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(劇団、本谷由紀子)

表に出ろいっ!(NODA MAP)

赤鬼(NODA MAP)

SISTERS(作・演出 : 長塚圭史

聴いた音楽

WORLD HAPPINESS 2015

パラシュートセッション2015秋祭「vol.32 朝崎郁恵×青葉市子」

Elton JohnJavaOne 2015)

  • 10/28(水)PST@Treasure Island

観た映画

地獄でなぜ悪い(DVD)

オン・ザ・ロード(DVD)

観た展覧会

www.tobikan.jp

おまけ : 出た芝居

後記

ふーむ。
地獄のように長くなりました。まあ、地獄のように観ているということです。

地獄でなぜ悪い

地獄ってこともないか。

今年はこれで見納め(の予定)です。
あとは本を読んだりコードを書いたりします。

Soft Skills の話の続きも書かなきゃ……。

*1:いわゆる市民劇団で、稽古は土日だけ