この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

2020年のふりかえり

やったこと

68 冊

今年読んだ本は、68 冊で着地。
年始に 50 冊以下にするという目標を立て、7 月に 80 冊までに下方(上方?)修正したが、無事 80 冊以下にすることができた。

と言ってはみたものの、上限の 80 冊に対してずいぶん余裕があることからもわかるように、あまり意識的に努力して数をおさえた、という感覚がない。ふつうに読んでいたらこうなっただけ。

こうなった大きな要因の一つは、おそらく通勤がなくなったことだと思う。短い通勤時間(ドアツードアで 30 分)ではあるけれども、されど往復 1 時間。週 5 日、月 20 日で考えると、月に 20 時間、年間 240 時間にもなる。1 冊読むのにかかる時間が平均 4 時間だとすると、これだけで実に 60 冊分だ。なるほど。

ともあれ、冊数は減った。では、もともとの目的に対してはどうだったか。

もっと読むのに時間がかかるような本や、異分野の本を読めるかもしれない。本ではない手段で学ぶ時間を増やせるかもしれない。アウトプットの時間をもっと取れるようになるかもしれない。

これについては、ぼちぼち、といったところ。

『学習する組織』や『世界標準の経営理論』といった、明らかに読むのに時間のかかる本に少し手を出しやすくなった。(どちらも読了はまだ)

今まであまりやってこなかった、家でコードを書く、ということにも少し多めに取り組んだ。(HTML/CSSDartClojure など)

アウトプットについては正直イマイチの感はあるものの、現在の職場に来てからすっかり仕事に満足して書かなくなってしまっていたブログ記事を(ふりかえり以外に)2 本は書いた。

enk.hatenablog.com enk.hatenablog.com

また、こちらは仕事だけど、久々にペアプログラミングについてなかなかいい記事が書けたのは満足度が高い。

tech.uzabase.com

そういえば、(細かいけど)Zenn でも 2 本書いたのだった。

新製品開発

7 月にも書いた新製品の開発を続けている。

前職でも新製品開発には携わったことがあったものの、日の目を見なかった。
今回は無事リリースされ、小さなところからでも世界を変えるために、サービスの開発と提供を続けることができている。

わかったこと

学習は続く

去年のふりかえりで、こういうことを書いていた。

ここ数年で、同じような本を見つけては読みしても、得られるものがどんどん減ってきているのを感じる。
理由はいくつも考えられるけれど、あえて大きく捉えると、「飽和している」のだと思う。

今年冊数を大きく減らしてみたことと関係があるかないかはわからないけれど、今年はそういう感覚がほとんどない。もしかしたら、いわゆる「プラトー」を脱したのかもしれない。

色々と学ぶ中で、今いる会社で大事にされている「ミッション、バリューで経営する」というのがどういうことなのか体感としてわかってきたり、『エクストリームプログラミング』を読み直して色々な再発見をしたり(これには『Clean Agile』の果たした役割も大きかった。ありがとうボブおじさん)。

もう一つ今年発見したのが、アウトプットによって学ぶ、ということ。これは常識の類で、再発見、と言いたいところだけれど、あえて自分に厳しい見方をするなら、アウトプットによって学ぶということを今まではそもそもわかっていなかったのかもしれない、と思う。

逆に言うと、アウトプットがなければ学ばない、ということ。これをわかっていなかった。どこかで、アウトプットは「学んだこと」を外部に出し、「学んだこと」を定着させるものだと思っていた。そうではなく、「アウトプットによって学ぶ」のだ。(ちなみに、このこと自体に、この文章を書きながら今気づいた。これがまさに「アウトプットによって学ぶ」ことの実例だと言えそう)

フェアに言うなら、アウトプットがなくても人は学ぶ。いや、うん、もちろんそうだ。ただ、アウトプットがあると効率が桁違いによくなる。

もちろん、アウトプットにはインプットよりも時間がかかる。だから、すべてのことをアウトプットによって学ぶわけにもいかない。とはいえ、重要なこと、ぜひ学びたいことについては、アウトプットすること。これが基本だということを知った。

今さらなのかもしれないが、これに気づいたのは個人的にとても大きい。これだけで向こう 5 年くらいは食えそうな感じがする。

つながっている感覚

今も取り組んでいる新製品の開発と提供を通じて、少しずつつながっている感覚を感じられるようになってきた。

つながっている感覚というのが個人的にとても大事で、というのは、個人の生活から、ソフトウェアの開発・運用、ビジネス、そして実社会への(よい)影響まで、すべてがつながっている感覚。
いくつかができていればよいのではなく、すべてができている感覚。これが大事だと個人的に思っている。ということを、昔からなんとなくは思っていたけど、今つながっている感覚を実際に感じられる中で、これが具体的な輪郭を持ってきた。

これを続けたいし、広げたい。個人的にもそういう環境にい続けたいし、みんながそう感じられるようになってほしい。

この感覚への選好は昔からある、個人的なものだけれど、とはいえ最近探求しているいくつかのものごととも関わりがあると思っている。たとえば、XP には「人間性」そして「相互利益」の原則がある。XP は、技術的な成功だけを目指していないし、ビジネスの成功だけを目指してもいない。そして、個人の欲求が満たされることを目指してもいる。リーンの全体最適の考え方やシステム思考も、おそらくこれと大きな関わりがある。

そういう仕方で仕事をしたい。

次にやること

月に 1 冊以上技術書を読む(※アジャイルの本など、コードが出てこないものは除く)

まだまだ学ぶべきこと、学べること、学びたいことがある。日々新しくなるソフトウェア業の仕事をしている限りはずっとそうなんだろうけど、もちろん今もそう。
先日『達人プログラマー』の 20 周年記念版を読んで、技術書の読書ペースがそれほど速くなくなっていることに気づいた。

『達人プログラマー』の「あなたの知識ポートフォリオ」という項目では「月に 1 冊のペースで技術書を読む」ことがすすめられているが、数えてみると、2020 年は 9 冊しか読んでいない。最近は Web 上のリソースなども充実しているとはいえ、体系的なインプットの手段としては、今も本は有用だと考えている。(少なくとも、本好きの自分にとっては)

ここで基本に立ち戻り、月に 1 冊以上技術書を読む。

月に 1 本以上記事を書く

この記事を書いて最大の発見は、「アウトプットによって学ぶ」ということ。今年最大の発見と言ってもいいかもしれない。

さっそくこれを活かす。そのために、月に 1 本記事を書くことにする。書く先はこのブログでもいいし、Qiita や、Zenn でもいいだろう。内容も書評でもいいし、こういうふりかえりでもいいし、技術メモでもいい。とにかく、アウトプットによって学ぶのである以上、学ぶためにアウトプットをする。

あとは自由

あとは自由。

あえてこう書いたのは、ここ数年の実績から考えると上の 2 つを達成するのがそれほど簡単ではないということもあるけれど、自由でも大丈夫そうだな、と思ったというのもある。生活をどうするとか、(技術以外の)〇〇のことを考えるとかするとか、決めない。

上に定めた最低限の 2 つの規律だけあれば、あとはなんとかなる、という謎の楽観がある。その理由の一つは、「わかったこと」のところで書いた、このあたりだろうか。

いくつかができていればよいのではなく、すべてができている感覚。これが大事だと個人的に思っている。ということを、昔からなんとなくは思っていたけど、今つながっている感覚を実際に感じられる中で、これが具体的な輪郭を持ってきた。

3 年前のふりかえりのときには、こういうことを書いていた。

かれこれ 10 年近く前からずっと、最大の課題が「自分がどこに行きたいのかよくわからない」ということで、ごまかしごまかしやってきたものの、いい加減年貢の納め時なのでは、という気がしてきています。
世の中誰もが「自分がどこに行きたいのか」わかってるわけでもないのだとは思うのですが、ずっと引っかかっていることなので、何らかのかたちで折り合いをつけたいと、いう気持ちがあります。

「どこに行きたいのか」(trip のイメージ)と問うても答えはなく、むしろ「どう行きたいのか」(journey のイメージ)と問えばいいのだ、ということがわかってきたのかも。だから、自由でいいんだ、と感じられるようになってきたのかもしれない。