魔法見積もり(Magic Estimation)
はじめに
「バックログ優先順位ゲーム(Backlog Priority Game)」について説明するこの記事を読んでいて、「魔法見積もり(Magic Estimation)」という手法に出会った。
You can play Planning Poker or do Magic Estimations to get the values, but remember that, to get good estimates, the numbers are just a side effect of the discussion, ...
(値を得るために、プランニングポーカーや魔法見積もりをすることができる。ただし、よい見積もりを得るためには、数字はあくまで議論の脇役にすぎないことを覚えておくこと...)
魔法見積もり、むやみにワクワクする響きだな……!? と思ってちょっと調べてみた。*1
魔法見積もり(Magic Estimation)
Magic Estimation を説明するいくつかのページを読んでみたところ、少しずつ違いがあったものの、共通していたのは以下のようなこと。
- たくさんのバックログ・アイテム(a.k.a. ストーリー)をすばやく見積もる方法。
- 予め、想定されるストーリーポイント(「Tシャツサイズ」のようなものでもよい)の枠を作っておく。「1、2、3、5」など。
- チーム全員で一斉に、アイテムをその大きさにしたがって並べ替える(それぞれのポイントの枠に入れる)。
- 並べ替えの前半は会話を禁止し、黙って行う。のちに議論して、並べ替えを完了させる。
魔法見積もり、何だろうって思ってたけど、やったことあるやつだった。
最近やった魔法見積もり
これまでにいくつかのチームでいくつかのバリエーションを試したことがある(いずれもいい感じに機能した)んだけど、直近チームでやったときの様子を紹介してみる。
様子
- リモートで行なった。
- チーム 4 名がビデオ通話をつないだ状態で、オンラインホワイトボードツールの Miro を開く。
- 候補となるストーリーポイントの枠(1、2、3)を作る。
- 見積もりたいすべてのストーリーの付箋(37 枚)をボードに適当に並べる。
- 各自が思い思いに付箋を枠に入れていく。
- このときは、「前半は会話禁止」というルールは特に設けなかった。適宜喋りながら(「あれ、これ2じゃなくて1じゃないっすかね〜」「なんで?」「〇〇だから」「たしかに」「じゃあこれも?」……)進めた。
- 15 分くらいですべてのストーリーにポイントがついた。
何が起きたのか?
今回、37 件ものストーリーを一気に見積もることになって、そのときちょっと時間もおしていたので、効率よくやりたい思いがあり、魔法見積もりをやることになった。(そのときはまだ「魔法見積もり」という名前を知らなかったけど :))
結果、うまく情報交換(ストーリーについて知っていることや、気づいたことの共有)もしながら、かなり妥当性の高い見積もりを出せたと思う。
たぶん、1 件ずつプランニングポーカーでやっていても、ほぼ同じ結果になった。でも、プランニングポーカーでやっていたら、たぶん 2 倍以上の時間がかかっていたと思う。経験上ストーリー 1 件の見積もりに平均 1 分程度はかかるので、37 件だと 37 分。15 分の 2 倍以上だ。
目論見通り、アウトプットの質を落とさずに、効率よく見積もることができた。
なぜうまくいったのか?
今回特にうまく行った理由(だと思うこと)を箇条書きにしてみる。
- 予めストーリーが洗練されていた。チームみんなでストーリー出しをやったあと、一つ一つ見て確認していく時間を取った。不明瞭なストーリーは書き直したり、分割したりした。ここで全員の認識が揃った。(これに 30 分くらいかかった)
- 予めストーリーの大きさがおおむね揃っていた。チームの慣習として、ストーリーポイントは最大 3 ポイントまでにしている。それ以上の大きさの場合は分割する。その習慣があったので、ストーリーを出す時点でおおむね 1〜3 ポイントの大きさになっていた。
- チームの人数が比較的少なかった。4 人だから、会話を禁止せずに喋りながらでもスムーズにやれたと思う。もっと大人数だと、「前半は会話禁止」というルールをちゃんと適用したほうがいいかも。
その他の補足情報
- 各ポイントのリファレンスとなるストーリーを予め 1 つずつ定めておくという方法もある。チームで各ポイントの大きさのコンセンサスがまだ確立していないときは、この方がいいかもしれない。
- 予めポイントの枠を定めるのではなく、まず並べてみて、そのあと各ポイントの境界線を引くという方法もある(「親和見積もり(Affinity Estimation)」というらしい)。
- 私たちのチームではみんなで適当にワイワイやったが、慣れていないチームでは正式なファシリテーターがいた方がいいかもしれない。スクラムの場合、スクラムマスターがその役割にちょうどいい。
- いずれにせよ、チームとプロダクト・プロジェクトの現在の状況に応じてプラクティスを調整することが大事。
まとめ
魔法見積もりはシンプルで、たくさんのバックログ・アイテム(a.k.a. ストーリー)をすばやく見積もることができるすぐれた方法だと思う。 うまくいくと本当に魔法のようにあっという間にストーリーポイントが決まるので、なかなかいいネーミングだと思う。
あと、「魔法見積もりやりましょう」って言うとなんかかっこいい。これからも必要に応じてやっていきたい。
参考文献
こちらの記事の説明が簡潔でわかりやすかった。
本記事だけで物足りない場合はあわせて読んでみてください。
*1:上記ページには魔法見積もりについての説明はなかったので、他のページを参照した