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作業ログのすすめ

作業ログをつけよう

一人で作業をする人は、作業ログをつけよう。

作業ログをつけることで、以下 3 つのメリットが得られる。

  1. 文字に起こすことで、思考を整理できる
  2. 休憩や割り込み等の中断から、直ちに復帰できる
  3. ふりかえりに使える、作業記録が残る

作業ログとはなにか

作業ログとは、その名の通り、行っている作業を記録することだ。

一人で考えたり、書いたりする時間をある程度持つ人には、ぜひおすすめしたい習慣だ。言葉で考える習慣と相性がよいので、プログラミングをする人や、文章を書く人には特に向いているのではないかと思う。

作業ログのつけ方に決まったルールはないが、日時を必ず入れることと、気構えずに思っていることを何でも書くことがポイントだと思っている。

一度の作業ログは、たとえば以下のような感じになる。

2014/03/20 23:49

長いことサボっていたので、ブログを書く。
Trello の記事がだいぶ重たくなってしまって、ポストするのになかなか腰が重かった。
この反省を活かして、一つ一つの記事は短くしていきたい。

まさに「今作業ログを書くとしたら」といった気分で書いてみた。

こういうのを、たとえば 1 つのテキストファイル(作業ログ.txt とか)や、話題ごとのテキストファイル([課題ID].txt とか)、あるいは Trello のカードなど、何にでもよいので、淡々と書き綴っていく。

作業ログをつける 3 つのメリット

作業ログをつけることの 3 つのメリットについて説明する。

文字に起こすことで、思考を整理できる

作業ログには、そのとき考えていることを何でも書く。

誰に見せるものでもないので、他人に伝わるかどうかとか、どう評価されるかとかいったことを気にする必要はない。「めんどくさい」とかいった感情も、構わず書く。
僕の場合、行き詰まっているとき、「厳しいなあ」とか「どうしたものか」とか書くこともよくある。そんなことを書くときは、じっさい厳しいときなので、「相談してみよう」と思い立つこともできる。

文字としてアウトプットすることによって、思考と感情が整理されていく。
頭のなかだけで一生懸命考えていてもなかなかまとまらないことでも、手を動かしてとりとめのない文章を紡いでいくことで、何となく考えがまとまっていくということがよくある。

文章はその場で読み返すこともできる。
まさに今書いた文章を読んでみて、たまには並べ替えたり、整えたりもしてみて、持っている仮説や論理展開に明らかな瑕疵がないか、いくぶん客観的な目で即席のチェックを行うこともできる。

休憩や割り込み等の中断から、直ちに復帰できる

作業を中断したとき、作業ログには、中断の直前までの思考と、感情の流れがそのまま記録されている。
だから、休憩や会議、あるいは相談等によって作業が中断された場合も、直ちに復帰することができる。

この効果は絶大といってよい。
作業ログをつけていると、「割り込み」と常にセットでやってくる「何してたっけ……」がほとんど起こらない。*1 *2

また、いくつかの作業を並行して進めているような場合にも、やはり絶大な効果を発揮する。むしろこちらの方が大きいとさえいえるかもしれない。
たとえば、作業 A をある程度進めた時点で、作業 B が最優先になり、作業 A を一週間中断することになったとする。このような場合、作業ログをつけていないと、作業 A を再開するときには作業の状況やそこに至るまでのコンテキストをすっかり忘れてしまっていて、ペースを取り戻すのに短くても数十分、長ければまる一日かかってもおかしくない。
作業ログをつけていれば、中断直前の状態だけではなく、作業開始から中断までの流れがすべて記録されているので、ざっと目を通すだけで、作業中断前とかなり近いコンディションに自身を整えることができる。

ふりかえりに使える、作業記録が残る

このように作業ログには、作業の流れすべてが時系列に沿って記録される。
このような資源を活用するのにもっとも適した活動の一つが、ふりかえりだ。

ふりかえりは、まさに行った作業を時系列にそって思い出すことから始まる。 ふりかえり(レトロスペクティブ)についてまるまる一冊を費やした書籍『アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』では、ふりかえりミーティングの基本構成を以下のように示している。

  1. 場を設定する
  2. データを収集する
  3. イデアを出す
  4. 何をすべきかを決定する
  5. レトロスペクティブを終了する

作業ログは、2 番めの「データを収集する」フェーズの非常に大きな助けとなる。

また、同書ではデータの収集にあたって「事実」と「感情」の両方を集めることが重要だと説く。
記録していない感情を、それを感じたタイミングとあわせて思い出すことは、(実際やってみたことがあるが)かなり難しい。
作業ログをつけていれば、難しいことなど何もない。そこに書いてあるのだから。

なお、いま紹介した「ふりかえり」のやり方は比較的長いスパンでのふりかえりの場合だったが、もちろん、作業ログは一日のふりかえりにも役立つし、タスクごとのふりかえりにも役立つし、単に作業が煮詰まってきたときにヒントを探すのにも役立つ。

元ネタとか Tips とか

元ネタについて

作業ログのことは、各種のプログラミング入門書や『数学ガール』シリーズの執筆で有名な結城浩さん(@hyuki)が出している有料メールマガジンで知った。 結城さん自身、作業ログのヘビーユーザ(?)ということで、メールマガジンにはたまに作業ログの話題が出る。(最近少ない気がして、ちょっと寂しいけれど)
試してみて、効果が絶大だったため、続けて、なお効果が増す一方なので、この記事を書くに至った。

彼が書いた作業ログについての記事もあるので、作業ログに興味を持たれた方はぜひご一読いただきたい。

また、結城さんのメールマガジンに興味を持たれた方は、こちらから。

Tips

日時の入力

僕の場合、 Google 日本語入力を使っているので、「にちじ」で変換すると現在日時 2014/03/21 0:47 に変換されるのがとても便利だ。
僕のように IME の機能を使うにせよ、何かマクロを用意するにせよ、日時はごく簡単に入力できるようにしておくのが、作業ログを継続するための一つのコツとなる。

思考を垂れ流す

個人的には、作業ログをフル活用する秘訣は「思考を垂れ流す」ことだと思っている。何かを隠そうとしたり、きちんと整理して書こうとしても、あまり得るものがないように思う。(もちろん、必要があればそれをしてもいいし、僕もすることがある)
自分以外の人に見られる場合は、思考を垂れ流すことは一般に好ましくないが、作業ログは基本的に自分だけが見るものなので、それで問題ない。むしろ、あとから読み返すときに思考の流れをトレースできることが、大きなメリットとなる。

もちろん、言葉を使うのが苦手な人、単にタイピングが遅い人等、思考を垂れ流すのも楽じゃないよという人もいるだろう。そのような人は、まずは今行っていることをごく簡単にメモすることから始めるのもよいと思う。それだけでも、作業ログには価値がある。

2014/03/21 0:56 ブログを書き終える。

まとめ

作業ログ、いいことだらけだ。
書いてていいことだらけすぎてヤバイと思ったが、実際そうなので仕方がない。

世の中には頭のいい人というのがいるもので、もしかしたらこんなテクニックを使わなくても、同等のことをすべて頭の中で(思考のスピードで)やれてしまう人もいるのかもしれない。(なんかどうやらいるっぽいな、とか最近思ってはいる)

とはいえ、たぶん大半の人はそうではないので、そうではないかも?と思った方は、ぜひ試してみていただきたい。

最後にひと言

一生懸命短くしてこれだよ。

*1:作業ログは万能ではない。マルチスレッドアプリケーションのデバッグ中に突然大事な予定のある週末の休日出勤を打診されたようなケースには対処できない

*2:念のため言っておくが実話でも何でもない