この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

スカラ祭 2016 2 日目 : Scala コミュニティはあります #ScalaMatsuri

ScalaMatsuri の 2 日目は、一日を通して行われるアンカンファレンスの題目を決める朝会から始まります。

アンカンファレンスというのは事前に登壇者や内容を決めず、参加者がテーマを持ち寄って、有志が発表したり、パネルディスカッションをしたり、議論をしたりといったことを、その場で決めてから行うカンファレンス、いやアンカンファレンス、のやり方です。
ScalaMatsuri では数年前からこのやり方を取り入れているようです。

詳しくはこの記事の「2日目にアンカンファレンス」のところを読んでいただければよくわかるかなと思います。

blog.scalamatsuri.org

なお 1 日めのレポートはこちら。

enk.hatenablog.com

朝会

というわけで、朝の 10 時から 1 時間、ワイワイと朝会を行い、一日のセッションを決めました。

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モデレータの岡本さん(右)と、もう一人運営の方(申し訳ありません、お名前がわかりません……)岩永さん(左)(ご本人からメンションいただきました、ありがとうございました!)

テーマは前日のうちにあらかじめホワイトボードに各自で貼り付けておいて、シールで投票する形式だったので、その得票数の多いものから順に取っていくのですが……。

  • 貼った人が(朝だから)いない
  • そのテーマで話してくれるはずの人が(朝だから)いない
  • (朝会に)日⇔英翻訳が必要で、うっかりマイクを通さずに話すと翻訳してもらえないので、何かと混乱が生じる
  • 主に日本人が話すセッションで英語で聞きたい人がいる場合に通訳が必要になるので部屋の制約が生じる

などなどでやたらとワイワイして最後バタバタしました。笑

実際、かなり(このように)複雑度の高い朝会だったので、バタバタしたのも仕方ないというか、むしろその複雑な仕事をとてもうまく回していたと思います。壇上のお二人以外のフォローも的確で、運営の実力を感じました。

こうやって決まった 2 日目のセッションは、50 分 × 6 コマ。
順に感想を述べていきます。

セッション

Domain-Specific Languages with Scala / Model-based testing with Modbat

一発目は、産総研(AIST)の Cyrille Artho さんによる 2 本立てのセッション。

朝会では NASA が何とか(?)言っていたのでドキドキしていたのですが、結果としては NASAドメインにかかわる話は特になかったように思います。笑

内容は、前半が ScalaDSL を作るということについて、外部 DSL と内部 DSL を対比させながら詳しく見ていくものでした。
全体として、Scala は(Ruby などにも似て)言語そのものの表現力が高いので、内部 DSL にする方がとにかく実装が楽だし、コンパイル時チェックも効くし、十分便利に使えてよいのかな……という印象を持ちました。
Scala 自体が DSL をつくるのに向いている言語だと思うので、Scala を本格的に使うことになったらそういう方面も視野に入れることができて、楽しそうだなと思います。

後半は Modbat というツールを使ったモデルベースのテストの話だったのですが、駆け足で例も少なかったこともあり、いまいち飲み込めずじまいでした……。

Spark 入門

続いては、お名前を聞きそびれてしまったのですが日本人の方と、午後に Spark で日本語テキストマイニングをするというセッションを持たれていた Eduardo Gonzalez さんによる Spark の入門セッション。

前半が Spark の概要の説明で、短い時間で Spark がどういうもので、何ができるのかざっくり掴めてありがたかったです。

後半は Azure 上に用意された環境でのハンズオンでしたが、ネットワークがちょっと不安定なこともあってか参加はできず。
見ていました。

Spark shell(ほぼ Scala の REPL みたいなもの)上で実行していたのですが、途中 Ctrl + C で終了してしまう場面があって、作った人が UNIX をよくわかっていないから……みたいなことを言ってウケていました。笑

Spark の考え方自体はわかりやすくて使いやすそうだなと感じるのですが、やはり分散処理基盤のことを考えるときにいつも感じる、「本当にやりたいこと」ができるのか(ノード内で外部リソースと I/O できるのかとか、I/O をさせないとしたら今度は大きなデータをノード間で引き回すことになってネットワーク的に非効率になるのではとか)という疑問は解けなくて、個人的にもやっとします。
実際にある程度使ってみればわかるようになるのでしょうか。できない、ような、そもそも考え方が違う、ような気はするのですが。

リアクティブシステム入門

お昼をはさんで、午後の一発目。
SBT わからないので「SBT 人間」と迷ったのですが、SBT 人間には同僚が出てくれるということでこちらに来ました。

TIS の前出祐吾さんによるセッションです。

大きく分けて「リアクティブシステムとは」ということを説明する前半と、それを実装した例である「Reactive Solar Farm monitor」(多数のソーラーパネルから情報を収集してモニタリングするシステム)を実動させてみる後半という構成で、とてもわかりやすくまとまっていたと思います。

昨日の岡本さんのセッションとかぶる部分もあればかぶらない部分もありで、あわせて聞いたことでだいぶ理解が深まりました。

個人的に「届けたい価値は高レスポンス、支える原理が伸縮性と耐障害性、手段がメッセージ駆動」という説明がとてもわかりやすかったです。
この説明で初めて(ようやく)Reactive Manifesto のあのよく引用される図の意味が腑に落ちました。

腑に落ちて、なるほどもっともだ、と思ったので署名しておきました。笑
理念自体は、(当たり前といえば当たり前ですが)結局これに全部書いてあるのですね。

やや余談ですが、WEB 上のリソースでは伊藤直也さんの Qiita の記事が、僕がこの 2 日間で得た理解とだいたい同じで、納得感がありました。

qiita.com

後半のデモはというと、マシンスペックの問題でやや動作が重たくはあったものの、Akka で動作させている各ノードが協調しながら動作する様子は見事でした。
たとえば、Master Analyzer(単数)と Worker Analyzer(複数)があって、Worker は増減できるし(立ち上がったら自動的にシステムに参加する)、Master が落ちたら生きている Worker が Master に自動で昇格する、というのもうまくいっていました。
かっこいい。

IntelliJ IDEA で Scala をマスターする

続いて JetBrains の Alexander Podkhalyuzin さん(@Safela)によるセッション。

IntelliJ IDEA の便利な使い方をひたすら披露し続ける実に充実した 50 分間でした。

いや実際、こんな機能もあるんだ、こんなこともできるんだ、と発見の連続でした。僕がそもそもほとんど使ってないというのもあるとは思いますが。
Alexander さん自身「IntelliJ IDEA はすごく便利なのに機能を知らない人が多すぎるから discoverability を上げることに力を入れている」みたいなことを言っていて。大事です。そういう活動。
余談ですが僕(たち)が会社で開発している DataSpider Servista *1 も一種の開発ツールみたいな側面があるので、ユーザミートアップのようなところで Tips を教えるコーナーみたいなのがあっても面白いのかな、と思ったりします。

なかでも以下の 2 つがヒットでした。(ショートカットキーは Windows の場合)

  • Find action(Shift + Ctrl + A)で、名前からアクションを探せる
    • 極論を言うと、ショートカットはこれと「Search everywhere(Shift 2 回)」だけ覚えておけば何とでもなる! すごい!
  • Intention action(Alt + Enter)でとにかく賢くコードの変換候補を出してくれる
    • for 式をガシガシ分解して Scala でどう解釈・実行されるかを見られるのは衝撃的

自分用のメモも兼ねるので、取ったメモは以下にそのまま残しておきます。

IDEA Part

  • focusing performance, general usability, and more discoverability!
  • Run : Shit + Ctrl + F10
  • Find action : Shift + Ctrl + A
  • Use distraction free mode!
  • Search everywhere : Double Shift
    • File : Shift + Ctrl + N
    • Context : Shift + Ctrl + Alt + N
  • Recent Files : Ctrl + E
    • Recently Changed Files : Ctrl + Shift + E
  • Switcher : Ctrl + Tab
  • Class Structure : Ctrl + F12
  • Hide All Windows : Ctrl + Shift + F12
  • Presentation mode as super

Scala Part

  • Use Alt + Enter to improve your scala code
  • Inspection for multiple files is also available
  • Worksheet function : light worksheet interactive mode works like REPL!
  • Intention action : Alt + Enter
    • for 式をガシガシ分解できる!
  • Delete Line : Ctrl + Y
  • Smart Completion : Shift + Ctrl + Space
    • When using Option, it's useful
  • Copy Reference : Ctrl + Shift + Left
  • Toggle Breakpoints : Ctrl + F8

Hidden Gems

  • Variables の右クリックメニューからの Mark Object でオブジェクトを追跡する
  • _DebugLabel で Marked Object を取得する(Watches に追加もできる)

DDD + CQRS + EventSourcing 実装する会 / Akka パフォーマンスチューニングについて話してみよう会

ここで僕にとっては今日初めてのパネルディスカッションです。
ChatWork の加藤さんをモデレータに、Scala で DDD を実践されている人たちとして、ゲヒルンのまつしたさん、昨日もセッションを持たれていた MOTEX の藤井さん、Socket のおくださんが登壇されました。

はじめに加藤さんから DDD の概要をさらっと紹介したあとは、ひたすらディスカッションでした。

全体的な印象として、実際にやっている人が集まるとさすがに議論が深いな、ということと、Scala も DDD もやっていないとなかなかついていけないな、ということを感じました。笑
とはいえ、やっている人たちがこれだけいるということには、それだけで勇気づけられる気がします。

それ以外に得たものとしては、(昨日の藤井さんのセッションでも聞きましたが)CQRS(Command Query Responsibility Segregation)や Event Sourcing というキーワードや、それらの使い方と使ったときのイメージ(どう実装して、どういうところが課題になって……)といったところでしょうか。

CQRS には提唱者の Greg Young さんが書いた割と大物のドキュメントがあって、それを参照しながら議論するようなものなのだ、ということがわかったのも収穫の一つでした。

Scala の教育について

ScalaMatsuri 2016 最後のセッションは、昨日や朝会でも登壇された岡本さんをモデレータとして、前のセッションから続いての加藤さん、Wix の Tomer さん、ドワンゴの吉田さん、はてなのだいくしーさんによるパネルディスカッション。

実は今日一番気になっていた Scala の教育についてのセッションです。
というのも、何を隠そう(隠してない)僕自身が Scala 入門者で、Scala軽くて(薄くて)、網羅的で、正しくて、楽しくて、手も動かせるような入門用リソースがなかなか見当たらないことに困っていたからです。

色々求めすぎだろという感もありますが、たとえば同じく(?)モダンコンパイル型言語である Go には Go コードの書き方A Tour of Go といった具合に日本語の入門リソースが充実していますし、『改訂 2 版 基礎からわかる Go 言語』もとてもいい本でした。

それに比べると Scala では公式のチュートリアルはありますが英語ですし、入門編として有名な Scala School も英語ですし、日本語の書籍はちょっと古いものが多く、使えるには使えるのでしょうが、いまいち心がときめきません。
仕方なく今は公式チュートリアルを英語でやっていますが、英語が苦手な人に勧めるのはちょっとためらわれます。(昨日の瀬良さんの話にもあったように英語がんばろうよというのはあるにせよ、そのせいで Scala に入門しづらい、というのはなんかもったいない)

Effective Scala が日本語で読めるのはとてもありがたいですね。ただ、その手前がありません。

コンセンサスのない Scala 教育

前置きが長くなりましたが、そんなわけでとても関心の強いトピックだったのです。

昨日公開されたドワンゴの Scala 研修テキストの話を皮切りに、議論はさまざまな方向へ展開しましたが、結論めいたものは出なかったように思います。

そうなのです……。

岡本さんが最後に(時間切れでまとめる時間がなかったこともあり)「コンセンサスがないのが現状ということのようです」といったことをおっしゃっていましたが、それを象徴するように、加藤さんが「Better Java →関数型への傾倒→純粋関数型」というステージが……みたいな話をしていたら Tomer さんから「ステージを上がっていくという考え方には同意できない、Scala では色々な選択ができるのであって、関数型で書くかは選択の問題」といった反論がありました。
反論といっても別に必ずしも対立しているわけではなくて、要は加藤さんのチームが「純粋関数型を選択した」ということ(そういう前提で話していた)なのだと思いますが、Scala には何かにつけこういうところがある、という印象はあります。

スケーラブルな言語で、色々な書き方ができるので、その分学習者が混乱してしまう面もあるように感じます。
帰り道で同僚が「コップ本一通り読んでも(そこに書かれていない機能が使われているから)OSS のコードが読めるようにはならない」と言っていたのも印象的でした。

そんな状況の中、公開されたドワンゴのテキストは、これは、すごくありがたい存在なのでは……? と個人的には思っています。
もちろん「ドワンゴの社員のための」テキストではあるのでしょうが、

  • 2015-2016 年時点でつくられた新しいテキストであること
  • 日本語であること
  • (一見したところ)言語機能の解説にとどまらず、エコシステムや、それこそ前述した「選択」の理由、のようなところまで丁寧に書かれているようだったこと

といった理由から、うまく使えば Scala の入門一般に役立つのでは、と期待しています。 とりあえず、Scala 入門者である僕自身がさっそく使ってみたいと思います。よければ他の人にも勧めます。

https://dwango.github.io/scala_text/dwango.github.io

まとめ : Scala コミュニティはあります

こうして楽しい 2 日間が幕を閉じました。

いや、楽しかったです。
率直に言って Scala エンジニアではないし、Scala プログラマでもないし、そらで Hello World 書けるかっていうと書けないのですが、それでも。
何が楽しかったかといえば、Scala という言語自体の魅力はもちろんあるのですが、同じくらい Scala コミュニティの魅力というものもあったのでは、と思います。

(ソフトウェアエンジニアとして)大人が多いというか、Scala がまだ普及しきっていない言語だから、Java とかに比べるとエッジに比較的近いからということもあるかもしれませんが、成熟している感じがするのです。(年齢とかではなく。年齢では Java の方がよっぽど……)
2 日目をまる一日使ったアンカンファレンスがふつうに成立してしまうことからも、それがうかがえます。

僕はこの 2016 年において Java の魅力の半分……とまでは言いませんが 3 割くらいはコミュニティの魅力だと思うのですが、Scala にもコミュニティあるんじゃん、がっしりしたやつが、という印象をこの 2 日間で受けました。

その面でも、Scala これからが楽しみな言語だな、と思います。
当初の思惑通り(?)、Scala の学習ペースを早めて、何らかのソフトの開発で実用できるようになっていけたら、と思っています。

*1:残念ながら Scala ではなく Java で開発しています

鑑賞記録 2016 年 1 月(書く女、夫婦 ほか)

新年は芝居が 4。

観た芝居

十一人の少年

色々な劇があるのだ、ということが最近(まともに見始めてから 1 年経ってようやく……)わかってきました。

イスラ! イスラ! イスラ!

  • 岡崎藝術座
  • 1/15(金)20:00~@早稲田小劇場どらま館

これも色々な劇のうちのひとつ。

遠くて、むずかしかった。

役者が全員ずっと仮面をつけていたので、自然とからだの微細な動きに注意が向くのが面白かった。
でも、それ自体に大きな意味はなかったような気もします。

こうやって遠いものがふとした拍子に近くに来ることがあるのは知っているけど、でもやっぱり遠かったなあ。

書く女

最近あまり「美しい」という言葉を使いすぎないようにしようと心がけているのだけれど、書く女の黒木華はじつに美しかったので。

夫婦

ハイバイは今までに観たどの演劇とも少しずつ似ているようで似ていなくて、にもかかわらず観劇体験が高水準で(それこそ「遠い」みたいなことも全然なくて)、不思議な魅力でした。
今度の『おとこたち』もぜひ観に行きたい。

以上、絞って絞って 4 本でした。

2016 年 1 月に読んだ本(内向型人間のすごい力、「じか」の思想 ほか)

前回の読書記録で、

量から質へ、さらっと読める本から歯ごたえのある本へ、またインプットからアウトプットへ、徐々に移行していきたいな〜と思っているので、この読書記録のつけ方も今後ちょっと変えるかもしれません。

なんてことを言っていましたが、今のところおおむね今までどおり読んでいます。

読んでいるうちは、記録もつけておこう、と思います。

1 月のよかった本

内向型人間のすごい力

内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える (講談社+α文庫)

内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える (講談社+α文庫)

大人になってみて、子供のころこれを知っていれば色々と違っただろうな、もっとずっと生きやすかっただろうな、と思うことがちょくちょくあります。
この本に書かれていることも、そのうちの一つでした。

著者は、「内向型」の人が内向型である理由(原因)や、そのことを生かす方法、「外向型」の人との違いなどを、科学的な知見から論じます。
一つ一つの説明が個人的な経験・記憶によく一致していて、深い納得感がありました。それはただ自分のことだけでなく、きっと内向型だったであろうあの人や、ちょっと苦手だった外向型のあの人のこともです。

この本のいいところは、「内向型はこんなに優れている!」といった内向型賛美みたいなものでは決してなく、むしろ外向型の人も含めた「人間をより深く理解する」ための本として読めるところです。

ちょっと変な言い方ですが、この本を読んだあと、もし同じスタンスで書かれた『外向型人間のすごい力』という本があればぜひ読んでみたくなるような、そういう射程距離を持った本でした。
僕は大きく分けると内向型なので、外向型の(特徴を多く持った)人のことをもっとよく知りたいのです。そのために、この本自体も役立つし、(外向型の人のことを)もっと知りたい、と思わせる不思議な魅力を持った本でした。

かといって、「外向型」の人がこれを読んで感銘を受けるかどうかはさすがにちょっと自信がないのですが、できれば読んでほしいし、自分が「内向型」だと思っている人(そのことを意識的に悩んだことがある人……ほぼすべての内向型の人は、あると思いますが)には、ぜひ読んでほしい本です。

「じか」の思想

「じか」の思想 (第4巻) (セレクション 竹内敏晴の「からだと思想」(全4巻))

「じか」の思想 (第4巻) (セレクション 竹内敏晴の「からだと思想」(全4巻))

去年の一時期にどハマりした竹内俊晴さんのセレクションシリーズ完結編。

実は、この第 4 巻には竹内さん自身が筆を執った『愛の侵略』という戯曲が収められていて、なんとなく「観ていない戯曲」を読む気があまりしない時期だった去年の僕は『愛の侵略』の冒頭でずっと止めたままにしていたのでした。
「愛」の「侵略」という何となくざらっとした違和感のあるタイトルも、読み進めることを思いとどまらせた一因だったかもしれません。

ところが、ふと思い立って読み進めてみると、これが。
マザー・テレサの生涯を追う作品なのですが、このマザー・テレサがしていることがまさに「侵略」そのもので、戦慄的なのです。

具体的なエピソードを引いてもうまく伝わりそうにないので、あえて引きたくないのですが、アルバニアを出て、インドに入って、野垂れ死んでいく人たちに執拗にかまって、介抱して、看取ろうとするマザー・テレサははっきりと侵略者なのです。「愛」の。

それがどういうことなのか、僕が生きることや社会やら世界やらにとってどういう意味を持つのかは、正直言って全然消化できていません。
ただ、とにかく、竹内さんの選集の最後あたりにそんなものが出てくるとは思っていなかったので、びっくりしてしまいました。と同時に、人間と「からだ」と格闘し続けてきた竹内さんがここにぶつかることに、不思議な納得感のようなものもあります。

『愛の侵略』は、単行本も出ています。
が、『「じか」の思想』に収められたものは未公刊の新版とのことだったので、多少内容が異なるのだと思います。

愛の侵略―マザー・テレサとシスターたち

愛の侵略―マザー・テレサとシスターたち

読書メーター

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4271ページ
ナイス数:17ナイス

ひらく美術: 地域と人間のつながりを取り戻す (ちくま新書)ひらく美術: 地域と人間のつながりを取り戻す (ちくま新書)感想
美術を使って、地域と人間、人間と人間とのつながりを取り戻していくことの記録です。著者は最後に「一般解を示したかったがそうはいかなかった」ということを書いていますが、さすがの具体性、個別性と、同時に十分な広がり、長い射程距離を持ちあわせた本だと思います。
読了日:1月2日 著者:北川フラム
日本人はどう住まうべきか? (新潮文庫)日本人はどう住まうべきか? (新潮文庫)感想
この本で言われている「だましだまし」ということの価値(あるいは原理主義のデメリット)を忘れている日本人はきっと多いと思うし、こういった本を通して多くの人がそれに気づいてくれたら、と思います。(その方がたぶん生きやすくなるから)
読了日:1月3日 著者:養老孟司,隈研吾
おとなになるってどんなこと? (ちくまプリマ―新書)おとなになるってどんなこと? (ちくまプリマ―新書)
読了日:1月3日 著者:吉本ばなな
独立国家のつくりかた (講談社現代新書)独立国家のつくりかた (講談社現代新書)感想
実力行使に次ぐ実力行使で現代現実世界をビシバシ拡張していくさまに、しびれます。
読了日:1月3日 著者:坂口恭平
だから演劇は面白い! (小学館101新書 50)だから演劇は面白い! (小学館101新書 50)
読了日:1月3日 著者:北村明子
楽しもう。瞑想:心に青空が広がる (光文社知恵の森文庫)楽しもう。瞑想:心に青空が広がる (光文社知恵の森文庫)感想
瞑想とは何かということから具体的なやり方、その効果(するとどうなるか)、またなぜ機能するのかという説明やTIPS的なところまで幅広く、かつしっかりとカバーしているよい入門書だと思います。
読了日:1月3日 著者:宝彩有菜
掏摸(スリ) (河出文庫)掏摸(スリ) (河出文庫)
読了日:1月4日 著者:中村文則
始めよう。瞑想:15分でできるココロとアタマのストレッチ (光文社知恵の森文庫)始めよう。瞑想:15分でできるココロとアタマのストレッチ (光文社知恵の森文庫)感想
姉妹編の『楽しもう。瞑想』とは多少かぶる部分もあるますがおおむね相補的な内容で、興味深く読みました。やはり入門書です。姉妹編の後に読みましたが実践のこと(手順やコツ)が色々と詳しく書かれていて、参考になりました。
読了日:1月5日 著者:宝彩有菜
実践 JUnit ―達人プログラマーのユニットテスト技法実践 JUnit ―達人プログラマーのユニットテスト技法感想
JUnitの使い方(テクニック)というよりは、テストへの考え方から具体的な留意点、設計の工夫やTDDまで、(JUnitの使い方も解説しながら)ユニットテストの入門〜中級までを幅広く、程よいボリュームで扱った良書です。
読了日:1月7日 著者:JeffLangr,AndyHunt,DaveThomas
角川インターネット講座 (10) 第三の産業革命経済と労働の変化角川インターネット講座 (10) 第三の産業革命経済と労働の変化感想
視点が高くて、面白かった。後半が特に面白いので、構成でちょっと損している気もします。(後半を読んだあとに序盤を読んだ方が面白いような……)
読了日:1月9日 著者:
命売ります (ちくま文庫)命売ります (ちくま文庫)
読了日:1月11日 著者:三島由紀夫
こんな舞台を観てきた: 扇田昭彦の日本現代演劇五十年こんな舞台を観てきた: 扇田昭彦の日本現代演劇五十年感想
日本の演劇を50年以上見つめ続けてきた扇田昭彦さんの連綿たる劇評112本。その場にいなかった/いられなかった人間にとってほんとうにありがたい仕事です。
読了日:1月17日 著者:扇田昭彦
「じか」の思想 (第4巻) (セレクション 竹内敏晴の「からだと思想」(全4巻))「じか」の思想 (第4巻) (セレクション 竹内敏晴の「からだと思想」(全4巻))感想
竹内さんのセレクションシリーズ完結編。これに収められているマザーテレサを描いた戯曲「愛の侵略」はまさに「侵略」そのもので、戦慄しました。
読了日:1月17日 著者:竹内敏晴
内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える (講談社+α文庫)内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える (講談社+α文庫)感想
この本を読んで、「強い言葉を使う人の言うことを必ずしもその通り聞かなくてもいいんだ」ということを本当に深く納得したように思います。他にも、「内向型」の人にとって示唆にあふれた、自分や、自分だけでなく(「外向型」の人も含む)他人をより深く知ることのできる本です。その点、この本のタイトルは必要以上に言葉が強い感じがして、そこだけちょっとマイナス。(タイトルのせいでありがちな自己啓発書の類かな……と思って手に取るのをためらいました)
読了日:1月21日 著者:スーザン・ケイン
からだ・こころ・生命 (講談社学術文庫)からだ・こころ・生命 (講談社学術文庫)
読了日:1月23日 著者:木村敏
時間と自己 (中公新書 (674))時間と自己 (中公新書 (674))
読了日:1月28日 著者:木村敏
詩の樹の下で詩の樹の下で感想
樹の、本です。
読了日:1月29日 著者:長田弘
23区格差 (中公新書ラクレ 542)23区格差 (中公新書ラクレ 542)
読了日:1月31日 著者:池田利道

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