この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

2 月短歌

2 月の短歌はこちらになります。

  • 夕暮れに善きも悪しきもあるものか 夕暮れは夕暮れでしかない
  • 「ネブア氏」「え? 聞こえなかった、今なんて?」「ネブあし」「なんだ、寝不足のこと」


ああ、ねぶ脚のこと。

それから、はてなで題詠の企画が始まったおかげで、10 首稼ぎました。
題があると、すらすら出てくるものなのですね。しらなかった。

「当面はソフトウェア開発と芝居の二本立てでやってくかいね」とばかり気持ちを新しくしていた矢先にこいつがきたので、ちょいとペースを狂わされています。

まあ、そういうものか。

いそがしくなりそうだ。

はてな題詠「短歌の目」3 月

はてなで先月始まった短歌の企画(題詠)に参加したら色々といい感じだったので、今月も参加します。



  1. 全国の「雛鳥」に関するお店 458件もある



  2. 弁当の苺は彼奴に奪われた メロンパンとて踏みしだかれた



  3. 鈴の音と風が川面をわたる頃 野辺に降り来る青い夕ぐれ

  4. ひとり言

    人間の話を聞いているときはそのときだけは止むひとり言

  5. 揺らぎ

    飽きもせず揺らごう揺らぎ続けよう揺らぐばかりが人生ならば



  6. 仔羊が親羊よりあまいなら子は親よりもあまいだろうか



  7. 銀座線副都心線千代田線山手線はお乗り換えです

  8. バク

    バクの色、かたち、大きさ、顔 すべて夢を吸い込むためつくられた

  9. 年度末

    年度末年度末とは言うけれど花は年度の「ね」さえ知らない

  10. 信号

    届く日が来るとも来ないとも知れず送り続ける手旗信号

作歌のスピード感が取り柄なので、いつも通りスピーディに公開してみます。
「バク」がむずかしかったです。バクって、バクだよね……的な。

なお前回にも参加された方などはよくご存知かと思いますが、はてなブログでは範囲選択で「引用スター」をつけることができるので、気に入った歌があった方はつけていただけると、とても嬉しいです。

最後に、前回のエントリはこちら。

はてな題詠「短歌の目」第0回の雑なふりかえり

はてなブログのトップページでたまたま見かけた企画になんとなく参加してみたら引用スターをいただくという経験を初めてしたのですが*1、承認欲求が満たされすぎてヤバイです。

麻薬のようだ。(吸ったことないけど)
これはみなさんにも麻薬をお配りするよりほかにない、と思って全作品読ませていただきました。

あと、主催者の id:macchauno さんに過去の短歌にも触れていただけて、嬉しかった。

あの歌は、その時に感じたガーン! を直通で短歌にしたものでした。

そのガーン! そのものではないのかもしれませんが、少しでも何かが伝わったようで、作った甲斐があったと思います。

ざくざくと感想

雑誌「ダ・ヴィンチ」読者の作、穂村弘の選による『短歌ください』を読んだときにも思ったのですが、プロというわけではないし、熟練者でもない(と思われる)人も少なくない、あえて平たく言ってしまえばシロートの短歌が、ふいに眩しく輝くときがあるようです。

短歌ください (角川文庫)

短歌ください (角川文庫)

たとえば、この作品。

外はほら寒いし風も吹いてるし手袋ないし肉まんあるし

なんでもない、あえてなんでもないと言うのももったいないくらいなんでもない日常のシーンを切り取っているだけなのに、不思議とあたたかな親密さを感じます。
肉まんがあたたかいからでしょうか。

あるいは、この作品。

夜勤明け 人の流れを逆走し コンビニで買う ビールと助六

買います。
夜勤明けに人の流れを逆走してコンビニに入ったら、ビールと助六

僕も買うので、たぶんこの人もほんとに買ったんじゃないかな、と思っています。
ただ実際にあったことを 57577 のリズムに乗せると、不思議とうたになるんですよね。

これとか。

瓜売りが瓜売りに来てノリノリで瓜投げ瓜食べ瓜叩き割る

こういうのは題詠じゃないとなかなか出てこないのかな、と何となく思うんですが、とにかく勢いが痛快です。結句でパッカーン! の音が高らかに響きわたっています。

これも。

あるものはなんでも煮よう 味が出て ぎゅっと沁みこむ おでん最高!

ここにうたとしてのひねりはたぶんなんもないんですが、最高さがどストレートに伝わってきて、最高です。(語彙力不足)

このどストレート力は、定型の力かもな、とも思いました。(この歌はジャスト定型です)
あと細かすぎるしたぶんたまたまかな、という気もしますが、全角スペースと半角スペースの使い分けも絶妙な効果を上げている、ような気がします。

これは画が美しい。

麗らかにじんわり染みる冬瓜と桜海老炊く君の横顔

こういう真っ当にきれいなのを作れるようになりたいな、と思ったりします。

この外道!!

この外道 人の風上にも置けぬ いますぐ雪見だいふく放せ

僕は雪見だいふくのことをことさら好きなわけではないですが、幼稚園児の頃にイチゴを取られて(その頃は言葉としてはまだ知らなかった)「この外道」という気持ちを感じたことならあります。

http://chemicalx.hatenadiary.jp/entry/2015/02/15/001838

これはもう。

離れない あなたのことが 頭から なれるだろうか あなたのあなた

「あなたのあなた」の一句で大勝利です。

ああ。

あなたには言えない事が多々あって 短歌にしたらもっと言えない

言えない。
短歌でなら言える、とかふつうなら思いがちなところへの「もっと言えない」がぐっときます。

もしかしたら、短歌だと伝わってしまうから、でしょうか。

それから、「あなた」に始まり、「多々あって」から「短歌」への「た」音の連なりも効果的なのですね。

知ってるよ。

ひとつだけ時間の止め方知ってるよ 明かりを消して白湯を飲むこと

ほんとに止まるかなあ、と思わず試してみたくなってしまう、不思議な魅力があります。
「知ってるよ」ってのがもうずるいですよね。

冬は越せます。

「いい店を探しますね」と10月に おでん無しでも冬は越せそう

おでんなしでも。

かように美味しくいただきました。

自作の解説

以降、自作の雑な解説を行っておしまいにします。

背が伸びて横断歩道の白いとこだけを踏むのもヨユーになった

実話です。

でも正直に言うと今もヨユーってほどヨユーでもなくて、あ、……足が短いのかな……。

ものごころついてこの方カロリーの一割はチョコレートで摂った

実話です。

さすがに厳密に計算してませんが、たぶんそれくらいだと思います。
一割チョコレートでできてるって考えると、なんかすごいですよね。

大学生の頃の一時期は半分くらいチョコレートだったので、特にその辺で稼いでいます。

雪は死ぬ 生きとし生けるものすべてつつんで凍えさせてから死ぬ

創作です。

科学的事実ではあるかもしれませんが。

いますこしあなたのことがわかるならおんなにうまれかわってもいい

実話です。

実際に生まれ変わったわけではありませんが。

板橋区天使突抜一丁目あたりにぼくの店はあります

創作です。

天使突抜一丁目は板橋区ではなく京都市下京区にあります。
前のうちから、推定徒歩十五分くらいでした。

あまやかなしずくしたたるまくわうり だらだら汗を垂らしてかじる

実話です。

甘かった。

着け外し可能なものばかり集めて きみはそうして今もひとりだ

創作です。

創作のこの歌が意外な人気を集めてしまって、なんだかちょっと申し訳なかったです。

でもまあ実際のところ、実話か創作かは関係ないんですよね、たぶん。
短歌って短いので、特にそういうところがあるのかもしれません。

星はなく月も吹く潮風もない夜にも生きた思い出はある

実話です。

まだ二十代ですが、もう半分ほど思い出の中に生きているフシがあります。

宇野くんはコンビニおでんのダシだけで三日はもつと豪語していた

創作です。

コンビニおでんのダシだけで多種多様な料理を創作する人ならいました。

卒業を一年のばしまたのばし四年が経つともういられない

実話です。

もちろん大学にもよると思いますが。

うーん、ふりかえりもたのしかった。

題詠企画、はじめからおわりまで楽しめて、なんだか忘れましたけど*2、皮から骨から全部残さず食べられる生き物みたいな感じがします。

数えてみると実話 6、創作 4 で、ふだん実話の短歌ばっかり作っている身からすると*3、気軽に創作が楽しめるのも題詠(特に、この 10 本ノック形式)のいいところかな、とも思います。

ぜひ次も参加したいと思っています。

*1:正確には、引用スターというものの存在自体認知していませんでした

*2:「完全食」という言葉が惜しい、ということと、同時に全然違う、ということはわかる

*3:そもそもあんまり作っていないのはともかく

はてな題詠「短歌の目」第0回

はてなで短歌の企画(題詠)をはじめたようなので、参加してみます。



  1. 背が伸びて横断歩道の白いとこだけを踏むのもヨユーになった

  2. チョコ

    ものごころついてこの方カロリーの一割はチョコレートで摂った



  3. 雪は死ぬ 生きとし生けるものすべてつつんで凍えさせてから死ぬ

  4. あなた

    いますこしあなたのことがわかるならおんなにうまれかわってもいい



  5. 板橋区天使突抜一丁目あたりにぼくの店はあります



  6. あまやかなしずくしたたるまくわうり だらだら汗を垂らしてかじる



  7. 着け外し可能なものばかり集めて きみはそうして今もひとりだ



  8. 星はなく月も吹く潮風もない夜にも生きた思い出はある

  9. おでん

    宇野くんはコンビニおでんのダシだけで三日はもつと豪語していた

  10. 卒業

    卒業を一年のばしまたのばし四年が経つともういられない

うーむ、なんか題詠っていうより大喜利みたいになってしまった。
短歌ってむずかしいですね。

1 月短歌

1 月、あっという間でした。

  • 最近、妙に一日が長い。(あんま寝てないだけかもしれない)
  • 心臓も眼もふともももタマシヒも生きてきたのだ はたとななとせ
  • いい話読んで「いい話だな」って言ってばっかの人生だった
  • 池袋の「LUMINE」を見て落ち着くの、どうかと思う。どうかと思う


でも、いきなり「一日が長い」とか言ってますね。

最近は体感時間がやたらと elastic になってるような気もします。
ほんの数ヶ月前のことが、遠い昔のことのように感じられたり。

なんなんだろう。