この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

2015 年のふりかえり

2015 年のふりかえりをします。

目標

年初に立てた 2015 年の目標は、以下の 3 つでした。

  • 美しいものにたくさん触れる
  • ものごとを見通す力をつける
  • 「データ連携」と「手触りのよいソフトウェア」に投資する

enk.hatenablog.com

詳細は、それぞれの項目のふりかえりで簡単に示します。

ふりかえり

目標ごとにふりかえっていきます。

目標 1 : 美しいものにたくさん触れる

美しいもの、自分が美しいと思うもの、美しいと思えそうなものにたくさん触れるようにする。
もちろん、ただ日常生活を送っているだけでも、世界は美しいもので溢れかえっている。でも、今年はそれに甘んじず、言ってみれば筋トレのようなつもりで、たくさんの美しいものに触れてみたいと思う。
より具体的には、音楽、美術、詩、小説、映画、舞台芸術、等々のいわゆる芸術作品(エンターテインメント作品も含む)に積極的に、たくさん触れるようにする。

触れましたとも……。

どれくらい

音楽

  • CD と iTMS あわせてアルバム 10 枚くらい買った *1
  • ライブやコンサートに 6 ステージくらい行った

美術

  • 展覧会に 4 件くらい行った

詩(短歌を含む)

  • 詩・短歌を 8 冊くらい読んだ
  • 評論・作歌論等を 4 冊くらい読んだ

小説

  • 14 冊くらい読んだ

映画

  • 10 本くらい観た(うち DVD で観たものが 7)

舞台芸術

  • 演劇を 63 ステージくらい観た(うち映像で観たものが 4)
  • ダンスを 3 ステージくらい観た

63 て。
うける。

その他

  • 戯曲を 18 冊くらい読んだ
  • その他演劇関連の本(評論、手引書等)を 27 冊くらい読んだ
  • エッセイとかも色々読みました
  • 漫画もちょいちょい

目標 1 のまとめ : 美しいものにたくさん触れた(達成度 : 90%)

たくさん触れました。

特に演劇周りがちょっと大変なことになりました。出会ってしまいました。
年初の時点ではまったくこんなつもりじゃなかったんだけど。

目標の達成度は 90% としたいと思います。
総量ではよくやったよという感じですが、こうして見るとジャンルの偏りがちょっと極端だったな、というのが反省点です。

おおむね目論見通り、入れまくったものがだいぶ自分のなかで熟してきて、ふつふつしてきているので、少しずつアウトプットに転換していきたい、と考えています。*2
インプットのペースは多少は絞りつつ、極端には落とさないように気をつけつつ、という按配で。

目標 2 : ものごとを見通す力をつける

自身が他者を理解するため、また他者に理解されるための手段として、ものごとを見通す力をつける。
あるいはもしかしたら、他者が他者を理解するための手段を知るための手段として。
基本戦術としては、これは実のところ昨年もやっていたことなのだけれど、本を読むことになると思う。
本を読むことによって、
・知識が増える(自分以外の人間のものの見方、考え方、持っている背景がわかる)
・考える力が増す(自分以外の人間の発言を深く、正しく理解できる)
といったことを企図する。

読みました、たくさん、たくさん。

どれくらい読んだか

今年読んだ本が、全部で 192 冊。

うち、前項の「美しいもの」カテゴリに属する(ことにした)本が 90 冊くらい。
そして、のちに触れる「技術書・仕事本」に属する本が 33 冊くらい。

ほか、いくらかは一種の実用書みたいなのもありますが、大半はこの目標 2 に資する本だったかなと思います。
とすると、ざっと 70 冊くらいでしょうか。

詩や小説、エッセイだって自分以外の人間のことを(あるいは自分のことも)わかるための糧にはなりますし、正確な数はわかりませんが、よく読んだ、と言ってよいと思います。

どんな本を読んだか

やはり「ひとを理解する」とういことを目指していることもあってか、コミュニケーション論や身体論の本が多かったです。

といっても、これは演劇にかかわる人たちが得意とするところでもあるので、一挙両得というか、シンクロニシティというか、シナジーというか……、とにかく、我ながらぐんぐん吸収しました。
鴻上さんの本とか、平田さんの本とか、あとは竹内敏晴さんという、かつて舞台の演出をされていた方の本にも強い衝撃を受けて、その後彼の著作のセレクションシリーズを買い集めたりもしました。

ジャンルとして何にあたるのかはわかりませんが、『愛するということ』も再読しましたし、なんとなく手に取った『自殺しないための99の方法』というのがすごくいい本だったりもしました

それから養老孟司さんの本、これもある意味身体論みたいなところがありますが、『唯脳論』がクリティカルヒットで、そのあといくつか読みました。
これも嬉しい出会いでした。

閑話 : コミュニケーション論が流行っているのかも

余談ですが、次の 2 つの本がたしかジュンク堂池袋店の何かのランキングで 2 トップになっていて、なんか、流行ってるんだなというか、そういう不安や課題を感じている人が増えているのかな、ということも思います。

あなたは、なぜ、つながれないのか

あなたは、なぜ、つながれないのか

やわらかな言葉と体のレッスン

やわらかな言葉と体のレッスン

どちらもなかなかいい本でした。
こういう話題に明るくない人には、いい手引きになるのでは、と思います。

哲学の本とか

あとは、ちょっとだけ哲学の本とか。
デカルトとかハイデガーとか。基礎(というか、「参照されるもの」)にあたるところから少しずつ埋めていけたらいいかな……と思っていて、カント、デカルトハイデガーは少しだけ(いやほんとうにほんの少しずつだけ……)わかるようになりました。

哲学の本といっても新書とか文庫とかの入門書を読んでいるだけなのですが*3、そこに書かれていることのレベルでは理解できていると思います。
これは我ながらなかなかのことで、数年前なら、一応日本語を読むことはできても、たぶん理解すること(「そういうことか」と思うこと)はできなかったでしょう。

読むことで、読む力がついて、読めるようになった、と考えています。
このあたりのことは、ここ 3 年ほどの読書の一つの到達点と言えると思っています。

目標 2 のまとめ : ものごとを見通す力が多少はついた……と思いたい(達成度 : 80%)

というわけで、目標の達成度は 80% ということにします。

数もまずまずですし、(これは今年だけのことではないのですが)前項でも書いたように、一つの壁を越えたかな、という感じがします。
昔いた大学で、同級生や先輩たちの言うことを聞いて、どうしてこの人たちはこんなにものごとをよく見通せるのだろう、と魔法を見るかのように感じていましたが、今ようやく当時の彼らに追いつけたり、追いつけなかったりしているかな、という感触があります。彼らが言っていたことが、今なら少しはわかる気がします。

追いつけたり、追いつけなかったりということで、ほどよく 80% ということにしておきます。
もちろん 80% 見通せるというわけでもなくて、今年の目標の範疇で、ということですが。

本の数で何もかもわかるわけではないですが、世の中には何千冊何万冊と読んでいる人もいるわけで、僕の読書量が(およそ 5 年前に記録を始めてから)だいたい 600 冊なので、まだまだ先に色々色々あるのだろうな、とも思います。

目標 3 : 「データ連携」と「手触りのよいソフトウェア」に投資する

...具体的なアクションとしては、(なんだかこればかりだけれど)やはり本を読んでそれを実践する、ということが中心になると思う。
ただし、特に以下のような観点を持って本を選び、また読む。
・基礎体力(アルゴリズム、設計やテストなどのソフトウェアエンジニアリング全般、計画やマネジメント)
・データ連携(文字コード技術やネットワーク、セキュリティ等)
・手触りのよいソフトウェア(UI/UX のための時間を作り、その時間を投入することで手触りのよいソフトウェアが実現できる)
こういった、どちらかといえば広く浅い学習の過程で、より深くコミットしたい領域を見つけることができれば、と思っている。

この目標の達成度については、議論を呼ぶところです。

読んだ本のリスト(33 冊)

本ということでいうと、技術書は以下の 15 冊でした。

また、チームのことや、プレゼンテーションの本、その他ビジネス書等、技術書ではないが仕事に直接かかわる本として、以下の 18 冊を読みました。

  • 究極の会議
  • ピープルウェア 第3版
  • 熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理
  • TEDトーク 世界最高のプレゼン術
  • 仕事は楽しいかね?
  • 小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
  • 会議が絶対うまくいく法
  • ガー・レイノルズ シンプルプレゼン
  • 情熱プログラマー ソフトウェア開発者の幸せな生き方(再読)
  • プレゼンテーション・パターン: 創造を誘発する表現のヒント(再読)
  • マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた
  • ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?
  • エバンジェリスト養成講座
  • エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 - 渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド
  • Soft Skills: The Software Developer's Life Manual
  • リモートチームでうまくいく マネジメントの〝常識〟を変える新しいワークスタイル
  • チームのことだけ、考えた。 - サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか
  • ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力

投資はしたけれど、それが「データ連携」と「手触りのよいソフトウェア」だったかは少し疑問

そこそこ読んでいますし、ただ読んだだけではなくて、会社で業務とは別のちょっとしたプロジェクトを立ち上げたり、Eclipse Collections やら Go やら触ってみたり、(会社のおかげですが)JavaOne2015 に参加したりと、「ソフトウェア業にまつわる活動」という意味ではかなり活性化できたと思います。
駆け込みではありますが年末に UX / UI 周りのイカした本を二冊(『さよなら、インタフェース』と『融けるデザイン』)読んで、強い影響を受けたりもしました。

ただ、「基礎を固める」という当初の目標にはそこまでコミットできなかったな、というのが正直なところです。
目標が変わったとも言えるかもしれません。

目標 3 のまとめ : ソフトウェア業がんばってはいる、基礎も少しずつ(達成度 : 50%)

目標そのものからはずれたものの、そこそこがんばれたと思う、とはいえ目標そのものは達成できていない、ということで、目標の達成度は暫定的に 50% とします。

基礎がだいじであることはもちろん変わらないので、これからも少しずつでもおさえていきます。*4

と同時に、具体的にやりたいことがいくつか出てきているので、基礎だけにこだわらず、興味のおもむくにまかせて精力的にソフトウェア業やっていけたらそれもいいかな、とも思っています。

フリースタイルでふりかえる 2015 年

ここまで、年初に立てた目標とその達成度を確認しながらふりかえりをしました。

最後に、目標に関わる関わらざるによらず、2015 年そのものをふりかえってみます。

2015 年のいろいろツイート集

やり方はいくつかあると思いますが、思ったこと・やったことで大事なことは結構ツイッターで何か言っているので*5、発言を拾ってみます。

自分で選んでいたい。

このときはまだ芝居どハマりしてなかった。

ほぼ日手帳初めて使い切りました。
前回は一年の中ごろで挫折しました、たしか……。あの頃は予定がなかったんだな。

そろそろ控えた方がいいかなと感じています。

今はもうこういうガツガツした感じじゃなくなってきました。
といっても、他者をわかるようになった、ということは(もちろんというべきか)なくて、どうわかることの可能性があって、どうわからないか、ということがわかってきた感じです。

少しずつ見えてきた気はします。
UI(あるいは NoUI)は、やっぱり重要です。

養老孟司さんの「現実」の定義(「数学は数学者にとっては現実」)とか、『融けるデザイン』で語られていた「自己帰属感」とか、少しずつ違った言葉も見つけつつあって、良好です。

その通りなのですが、当時はそんなことすらいちいち発見していました。

そんな日が来るなんて想像したこともなかった。

あなたがたが悪い。

もう遅い。

のちに、世界のすべてがわかることは当分ないな、ということがわかるので、当分死なずにすみそうです。

これを数ヶ月後に唯脳論が(一応のところ)片付けてくれました。
世界は脳より広い!

今は、このときよりももっと。

こんな時期もありました。
これを越えたところが今なのだな、と思うと納得感があります。

短歌には結局ちょっと引っ込んでもらいました。
また出てくることもあるかしら。

数ヶ月に一回行ってドカ買いするのが恒例化してきました。
だいたい 1 万円分買うと(ポイントカード制)併設の WEEKENDERS COFFEE All Right の 400 円分のカフェチケットがもらえて、 それがとてもおいしいのも嬉しい。

カッコいい大人になって長生きして死にたい。

結局腰入れてってほど観ませんでした。
が、まあこれからもぼちぼち観ていくかな。

このときから座右の銘を「みんな死ぬ」にしました。

今までは、わかってなかったんです。
でも世の中、わかってない人も少なくないとおもいます。

思います。
演劇のすそ野を広げていく仕事というのも、たのしそうだ。

15 年かかりました。

最近はもうねじれまくってよくわからなくなっています。

当面は全力でいきたい。

そもそも日本を出るのが初めてだったし、これは大きかった。

芝居を始めたのもそりゃあまあ、大きかった。

渋谷と和解した。

フェースブックとも和解した。

野田秀樹とも和解した。

もうしばらくはこれでいく見通しです。

Soft Skills に出会ったのも大きかった。

刈り取りの季節が来ています。

いそがしくしていました。

まとめ

まとめると、総じてここ数年、長い目で見れば十数年、足掻いてきたことごとが実を結びつつあって、この 2015 年で何か一区切りついた感じがします。

それと同時に、芝居を始めてみたりだとか、また新しいことも始めることができていて、なかなかバランスよく生きることができているかな、と思います。

そういう年代なのかもしれません。

せっかく勝ち取ったバランスなので、大事にしつつも、せっかく基礎が安定しているのだから、バランスを崩すようなこともバシバシ……とは言わないまでも、少しずつやっていけたらいいかなと思っています。

来年のことはまた来年。

*1:年間 100 枚以上とか買ってた頃を思うと隔世の感がありますが……

*2:2015 年の時点でちょっと漏れて、芝居に出たりもしてました

*3:方法序説』だけは読みました、薄かったので

*4:今年もまったくやらなかったわけじゃない、読了はしてないけど読みかけの本もいくつかあるし……

*5:最近言わなくなってきたので来年はないかもしれませんが……