この国では犬が

本と芝居とソフトウェア

はてな題詠「短歌の目」第0回の雑なふりかえり

はてなブログのトップページでたまたま見かけた企画になんとなく参加してみたら引用スターをいただくという経験を初めてしたのですが*1、承認欲求が満たされすぎてヤバイです。

麻薬のようだ。(吸ったことないけど)
これはみなさんにも麻薬をお配りするよりほかにない、と思って全作品読ませていただきました。

あと、主催者の id:macchauno さんに過去の短歌にも触れていただけて、嬉しかった。

あの歌は、その時に感じたガーン! を直通で短歌にしたものでした。

そのガーン! そのものではないのかもしれませんが、少しでも何かが伝わったようで、作った甲斐があったと思います。

ざくざくと感想

雑誌「ダ・ヴィンチ」読者の作、穂村弘の選による『短歌ください』を読んだときにも思ったのですが、プロというわけではないし、熟練者でもない(と思われる)人も少なくない、あえて平たく言ってしまえばシロートの短歌が、ふいに眩しく輝くときがあるようです。

短歌ください (角川文庫)

短歌ください (角川文庫)

たとえば、この作品。

外はほら寒いし風も吹いてるし手袋ないし肉まんあるし

なんでもない、あえてなんでもないと言うのももったいないくらいなんでもない日常のシーンを切り取っているだけなのに、不思議とあたたかな親密さを感じます。
肉まんがあたたかいからでしょうか。

あるいは、この作品。

夜勤明け 人の流れを逆走し コンビニで買う ビールと助六

買います。
夜勤明けに人の流れを逆走してコンビニに入ったら、ビールと助六

僕も買うので、たぶんこの人もほんとに買ったんじゃないかな、と思っています。
ただ実際にあったことを 57577 のリズムに乗せると、不思議とうたになるんですよね。

これとか。

瓜売りが瓜売りに来てノリノリで瓜投げ瓜食べ瓜叩き割る

こういうのは題詠じゃないとなかなか出てこないのかな、と何となく思うんですが、とにかく勢いが痛快です。結句でパッカーン! の音が高らかに響きわたっています。

これも。

あるものはなんでも煮よう 味が出て ぎゅっと沁みこむ おでん最高!

ここにうたとしてのひねりはたぶんなんもないんですが、最高さがどストレートに伝わってきて、最高です。(語彙力不足)

このどストレート力は、定型の力かもな、とも思いました。(この歌はジャスト定型です)
あと細かすぎるしたぶんたまたまかな、という気もしますが、全角スペースと半角スペースの使い分けも絶妙な効果を上げている、ような気がします。

これは画が美しい。

麗らかにじんわり染みる冬瓜と桜海老炊く君の横顔

こういう真っ当にきれいなのを作れるようになりたいな、と思ったりします。

この外道!!

この外道 人の風上にも置けぬ いますぐ雪見だいふく放せ

僕は雪見だいふくのことをことさら好きなわけではないですが、幼稚園児の頃にイチゴを取られて(その頃は言葉としてはまだ知らなかった)「この外道」という気持ちを感じたことならあります。

http://chemicalx.hatenadiary.jp/entry/2015/02/15/001838

これはもう。

離れない あなたのことが 頭から なれるだろうか あなたのあなた

「あなたのあなた」の一句で大勝利です。

ああ。

あなたには言えない事が多々あって 短歌にしたらもっと言えない

言えない。
短歌でなら言える、とかふつうなら思いがちなところへの「もっと言えない」がぐっときます。

もしかしたら、短歌だと伝わってしまうから、でしょうか。

それから、「あなた」に始まり、「多々あって」から「短歌」への「た」音の連なりも効果的なのですね。

知ってるよ。

ひとつだけ時間の止め方知ってるよ 明かりを消して白湯を飲むこと

ほんとに止まるかなあ、と思わず試してみたくなってしまう、不思議な魅力があります。
「知ってるよ」ってのがもうずるいですよね。

冬は越せます。

「いい店を探しますね」と10月に おでん無しでも冬は越せそう

おでんなしでも。

かように美味しくいただきました。

自作の解説

以降、自作の雑な解説を行っておしまいにします。

背が伸びて横断歩道の白いとこだけを踏むのもヨユーになった

実話です。

でも正直に言うと今もヨユーってほどヨユーでもなくて、あ、……足が短いのかな……。

ものごころついてこの方カロリーの一割はチョコレートで摂った

実話です。

さすがに厳密に計算してませんが、たぶんそれくらいだと思います。
一割チョコレートでできてるって考えると、なんかすごいですよね。

大学生の頃の一時期は半分くらいチョコレートだったので、特にその辺で稼いでいます。

雪は死ぬ 生きとし生けるものすべてつつんで凍えさせてから死ぬ

創作です。

科学的事実ではあるかもしれませんが。

いますこしあなたのことがわかるならおんなにうまれかわってもいい

実話です。

実際に生まれ変わったわけではありませんが。

板橋区天使突抜一丁目あたりにぼくの店はあります

創作です。

天使突抜一丁目は板橋区ではなく京都市下京区にあります。
前のうちから、推定徒歩十五分くらいでした。

あまやかなしずくしたたるまくわうり だらだら汗を垂らしてかじる

実話です。

甘かった。

着け外し可能なものばかり集めて きみはそうして今もひとりだ

創作です。

創作のこの歌が意外な人気を集めてしまって、なんだかちょっと申し訳なかったです。

でもまあ実際のところ、実話か創作かは関係ないんですよね、たぶん。
短歌って短いので、特にそういうところがあるのかもしれません。

星はなく月も吹く潮風もない夜にも生きた思い出はある

実話です。

まだ二十代ですが、もう半分ほど思い出の中に生きているフシがあります。

宇野くんはコンビニおでんのダシだけで三日はもつと豪語していた

創作です。

コンビニおでんのダシだけで多種多様な料理を創作する人ならいました。

卒業を一年のばしまたのばし四年が経つともういられない

実話です。

もちろん大学にもよると思いますが。

うーん、ふりかえりもたのしかった。

題詠企画、はじめからおわりまで楽しめて、なんだか忘れましたけど*2、皮から骨から全部残さず食べられる生き物みたいな感じがします。

数えてみると実話 6、創作 4 で、ふだん実話の短歌ばっかり作っている身からすると*3、気軽に創作が楽しめるのも題詠(特に、この 10 本ノック形式)のいいところかな、とも思います。

ぜひ次も参加したいと思っています。

*1:正確には、引用スターというものの存在自体認知していませんでした

*2:「完全食」という言葉が惜しい、ということと、同時に全然違う、ということはわかる

*3:そもそもあんまり作っていないのはともかく

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