10 月には、1Q84 祭が突如開催された。
祭といっても、ただ土日で文庫の 6 冊を一気読みしただけだけど。
1Q84 の影響で、いやよく考えたら別に影響でもなんでもなかったけど、高円寺に行ったりもした。とてもいいまちだった。
それ以外にも、なんやかやと色々読んだ。
10 月は 25 冊だった。
10 月のトップ 3
- 作者: 雪舟えま
- 出版社/メーカー: 短歌研究社
- 発売日: 2011/04
- メディア: 単行本
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「この歌集がこの世にあることが、怖いくらいうれしい」。
10 月の中ごろ、オープン翌日の土曜日に行った神楽坂の la kagu で、帯の推薦文でそう言っている東直子、「が選んだ 10 冊」、のうちのひとつとして売られていた。
文庫本を 3 冊買った直後で(オープン直後のこなれないオペレーションで、レジには行列が伸びていた)、むむ、と思ったものの、とにかく開いてみて
(これは)
と思い、また並んで、買って、外の階段に座って、一息に読んだ。
感想としては。
この歌集がこの世にあることが、怖いくらいうれしい。
いやー、まいった、まいった。
- 目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき
- とても私。きましたここへ。とてもここへ。白い帽子を胸に伏せ立つ
- 宇宙のほうから触れてきたのわたしスケートリンクで迷子でした
- おまえよく生きてるなあと父がいうあたしが鼠にいったことばを
歌集ってだいたい、気に入ったうたがたまに出てきておっと思って、かと思えばむずかしいうたもあって、これは、うーん? というものもそれなりにあって、というイメージなのだけれど、この歌集は、まず正拳突き間髪をいれず右ストレート、で倒れる暇すら与えられずにアッパーからのかかと落とし、みたいなところがある。
挙げ句の果てに
大人になったら、すきな人と暮らして、すきなだけお菓子を食べて暮らしたいとおもっていた。その夢を今生きている。
だそうです。まいったね。
なお補足しておくと、これまで紹介した歌ははじまりからほんの十数ページのうちのもので、あとがきにほぼ編年体と書いてあったのでこれらはたぶんこの人がとびきり若い頃の作で、夢を生きている時期のものとは違います。
- 作者: 東直子
- 出版社/メーカー: 邑書林
- 発売日: 2003/11
- メディア: 単行本
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からの東直子、という。
でも雪舟えまで熱くなりすぎたので、ここでは収録作のうちで好きなうたをいくつか紹介するに留める。
- 廃村を告げる活字に桃の皮触れればにじみゆくばかり 来て
- 「そら豆って」いいかけたままそのまんまさよならしたの さよならしたの
- 電話口でおっ、て言って前みたいにおっ、て言って言って言ってよ
- ブラジルはほんとに遠い国やけど、うん、そうやねん、や、まあ、そうやねん
- ふたりしてひかりのように泣きました あのやわらかい草の上では
少々リフレインに偏りすぎた感があるが、でも東直子のリフレインはほんとうによい。
もちろん、リフレイン以外もよい。
東直子はよい。
- 作者: 坂口恭平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/09/18
- メディア: 新書
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名著ではない。
けど、この世界に唯一定まるとされる物理現象としての「現実」とはまた異なる「現実」、それを現実と呼ぶべきではないのかもしれないけれど、たしかに目の前に感じられるもの、現実を(無意識のうちに)脱出したときそこにある何ものか、について言葉で語ろうとする野心的な試みは、印象に残った。
これに名前をつけたいなあ。
主観的には現実以外の何ものでもないので、できれば「○○現実」と呼びたいところだけれど。パラ現実、他層現実、複層現実、どれもファウルチップって感じか……。
そういえばこないだのゴッホについてのエントリで僕が「現実」という言葉を思うさま濫用していたところ、いつも的確なことばかり言うとある先輩から、それぞまさしく「印象」なのでは、というたいへん的確なコメントをいただきました。
ただ、直感的に、たぶん「印象」ともほんの少しだけずれたところにある何かだと思っているのだけれど、それを語れるほど精密な言葉を持ちあわせていません。
勉強しなきゃな。
読書メーター
まとめです。
2014年10月の読書メーター
読んだ本の数:25冊
読んだページ数:6616ページ
ナイス数:26ナイス
ヨッパ谷への降下―自選ファンタジー傑作集 (新潮文庫)
読了日:10月1日 著者:筒井康隆
隠し剣秋風抄 (文春文庫)
読了日:10月4日 著者:藤沢周平
ミナを着て旅に出よう (文春文庫)の感想
ミナ・ペルホネンの初代デザイナーの話。かっこいい。
読了日:10月4日 著者:皆川明
松浦弥太郎の新しいお金術 (集英社文庫)
読了日:10月4日 著者:松浦弥太郎
現実脱出論 (講談社現代新書)の感想
われわれが日常的に感じている「パラ現実」「他層現実」あるいは「複層現実」とでも呼べそうなアレを、言語化しようという思い切った、そして面白い試みです。俗に言う「現実」と、それらの他現実とのあいだを自由に行き来できるようになったら、楽しいだろうなあ。
読了日:10月5日 著者:坂口恭平
書店不屈宣言: わたしたちはへこたれない (単行本)
読了日:10月5日 著者:田口久美子
君が降る日 (幻冬舎文庫)
読了日:10月5日 著者:島本理生
雪のひとひら (新潮文庫)
読了日:10月5日 著者:ポールギャリコ
インフラエンジニアの教科書の感想
インフラの基礎知識がなくてにっちもさっちもいかない状態から、とりあえず「インフラの話を聞いて意味がわかる」状態にまで上がれる、すぐれた入門書だと思います。
読了日:10月5日 著者:佐野裕
ヴォイド・シェイパ - The Void Shaper (中公文庫)の感想
思索エンターテインメントとでも呼ぶべきものに仕上がっていて、いいもの読んだ、という印象。スカイ・クロラシリーズを読んだことがあったり、著者の筆が早いことを知っていたりするせいもあるかもしれないけれど、なるほどこういう風に書けるのか、技ありだなあ、という感想。もちろん、風物や立ち合いの様子といった身体感覚の描写も優れていて、たいへんよい。
読了日:10月7日 著者:森博嗣
大きな熊が来る前に、おやすみ。 (新潮文庫)
読了日:10月8日 著者:島本理生
たんぽるぽる (かばんBOOKS)の感想
この歌集がこの世にあることが、怖いくらい嬉しい。帯に東直子がそう書いており、まったく同感です。
読了日:10月11日 著者:雪舟えま
ナラタージュ (角川文庫)
読了日:10月12日 著者:島本理生
東直子集 (セレクション歌人 (26))
読了日:10月12日 著者:東直子
夜のミッキー・マウス (新潮文庫)
読了日:10月13日 著者:谷川俊太郎
たんぽるぽる (かばんBOOKS)
読了日:10月13日 著者:雪舟えま
生まれる森 (講談社文庫)
読了日:10月16日 著者:島本理生
一千一秒の日々 (角川文庫)の感想
それぞれちょっとずつ傷やらへこみやらのある人たちが与えたり得たりしながらそれぞれちゃんと生きている様子を丹念に描いたこの短編集が僕はとても好きです。
読了日:10月17日 著者:島本理生
1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)
読了日:10月18日 著者:村上春樹
1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編 (新潮文庫)
読了日:10月18日 著者:村上春樹
1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉前編 (新潮文庫)の感想
初めて拳銃を扱うシーンの緊張感がすごくよい。
読了日:10月19日 著者:村上春樹
1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉後編 (新潮文庫)
読了日:10月19日 著者:村上春樹
1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉前編 (新潮文庫)
読了日:10月19日 著者:村上春樹
1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉後編 (新潮文庫)
読了日:10月20日 著者:村上春樹
ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper (中公文庫)
読了日:10月26日 著者:森博嗣
読書メーター
プチ島本理生祭もほんのり開催されていました。(文庫をほぼほぼ読み尽くしたので、二周目)